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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.13 ■■■

成式の関心対象の獣[=毛者]としては、なんといっても獅子と象だろうが、社会一般からいえば、先ずは虎ということになろう。・・・

【虎】,
交而月暈。
仙人鄭思遠常騎虎,故人許隱齒痛求治,鄭曰:
 “唯得虎須,及熱插齒間即愈。”
鄭為拔數莖與之,因知虎須治齒也。
虎殺人,能令屍起自解衣,方食之。
虎威如乙字,長一寸,在脅兩旁皮内,尾端亦有之。
佩之臨官佳,無官人所嫉。
虎夜視,一目放光,一目看物。
獵人候而射之,光墜入地成白石,主小兒驚。

  [卷十六 廣動植之一 毛篇]

天竺では、獣の王様といえば、虎よりライオン。
為政者としては、ライオンを侍らすとか、ライオン狩りをして、権力の威光を見せつけたいところだろうが、生憎と、中華帝国支配地域にはライオンが棲息していない。
そうなると、虎しかいないのである。

言うまでもないが、中華帝国では、強い獣がいるならその力を頂戴しようということになる。従って、虎は自動的に狩猟対象に。流石に、毛皮は敷物にするだろうが、それ以外はすべて食用肉というか、特別高貴薬と見なされるからだ。もっとも、需要は多く、供給が追い付く訳もなく、虎肉と称されていても実際は異なる野獣が多かった筈。

昆侖南淵深三百仞。"開明獸"身大類虎而九首,皆人面,東嚮立昆侖上。 [「山海経」卷六 海内西経]
(門の数だけ顔が必要なので、9頭になっているだけ。昆侖山を守るのはあくまでも虎なのである。)
君子國在其北,衣冠帶劍,食獸,使二文虎在旁,其人好讓不爭。有梔リ草,朝生夕死。一曰在肝之尸北。 [「山海経」卷四 海外東経]
(虎を傍らに侍らすのは、決して難しくないことがわかる。)

そして、わざわざ人を喰おうという気はない獣である。従って、仏教的にも、それなりの役割を与えてもかまわぬ、となろう。   「虎の体質」

もちろん、人や類人猿を喰う虎がいない訳ではなかろうが、それは例外的と見なしていたようである。そんなヤツはカニバリズムも厭わぬ筈とされたに違いない。・・・

𦝫,一名唐已,人見之不祥,俗相傳食虎。
  [卷十六 廣動植之一 毛篇]
[「説文解字」:𦝫已上黄,𦝫已下K,食母猴。]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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