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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.1.16 ■■■

脂肪尾羊

グルメで有名な段家菜2代目当主が、ラム肉について薀蓄を傾けていないのが不思議だが、日本人的な嗜好だったのかも知れない。

しかしながら、羊の脂肪尾は食したことがありそう。

その羊の話が書いてあるからだ。ただ、食味については触れていないから、特段の感激はなかったと思われる。・・・

大尾羊,康居出大尾羊,尾上旁廣,重十斤。
又僧玄奘至西域,大雪山高嶺下有一村養羊,大如驢。賓國出野青羊,尾如翠色,土人食之。

  [卷十六 廣動植之一 毛篇]

大尾羊の尻尾につく脂肪の塊は西域の人々にとっては、不可欠な美味な食材。現在も新疆地区では、その習慣が続いているようだ。
玄奘によれば、大雪山高嶺に騾馬ほどの大きさの羊が飼われているとのこと。場所的には、興都庫什/ヒンドゥークシュ山脈ということになろう。
中原の人々にとってはおそらく、サマルカンド辺り送られてくる大尾の羊は垂涎モノというか、一種神がかり的な養羊品種に映っていたのではないか。
 西域出大尾羊,尾房廣,重10斤。 [「新唐書」]

賓國[カシミール]にも翠色の尾を持つ食肉用羊が飼われている。

おそらく、中東地方の遊牧民の搾乳中心産肉毛皮綿羊の"阿華西羊/Awassi"の脂肪尾発達種だと思われる。かなり古いタイプの飼育種であることは間違いない。

中国では、現在も、この系統はカザフ地域の特産種とされ残存している。・・・
  阿勒泰[アルタイ@新疆維吾爾イリ・カザフ自治州]福海大尾羊
  哈薩克
[カザフスタン]大尾羊

羊は地域とその主用途に応じて、様々な種へと改良が進められており、もともとの野生種がはっきりしているとは言い難いが、欧州型とアジア型の2つのムフロンが先祖臭い。アジア型は北伝と南伝の2系統に分かれているようだ。 [→]
成式先生も流石に、そこまでの考察に進むことも可能な、以下の羊の情報は得ていなかったようである。
 摩弗倫羊/Mouflon
 盤羊/Argali
 赤羊/Urial

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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