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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.2.26 ■■■

四言両句釈詩[8:雪山白象と香象]

"青牛<野象<雪山白象<香象"というのが、大力の順位。[→]
その雪山白象と香象の素晴らしさを詠ってみたかったようだ。・・・

   形如珂雪,
   力絶羈瑣
(善繼)  [續集卷五 寺塔記上]

"珂雪"とは雅語。
[=玉+可]は、もともとは馬の口[轡/くつわ]の玉飾りで、南海産の真っ白い蛤系の貝が正式とされていたようだ。俗称、くつわ珠である。しかし、現実的には、もっぱら白瑪瑙が使われていたと考えるべきだろう。
仏典で、雪の形容としてこの言葉が使われるが、純粋で汚れが皆無という意味を強調することになるようだ。
眉間にある白毫の様を言うくらいだから。・・・
「文殊師利!---
 如是如來手足等中隨相之文有八十種。
 何謂八十?---
 六十八者雪山白象像、---」
  :
「文殊師利!---
 何謂三十二種大人之相?---
 四者眉間毫相白逾珂雪、---」
  [唐 地婆訶羅 譯:「大乘百福莊嚴相經」第一巻]

辞書の用例としてよくあがっている釋文は、こちらである。・・・
況複天尊端嶷,威光四照,
煥發青蓮,容與珂雪,
覺祗衛之咫尺,若林園之斯在,大招離垢之賓,廣集應真之侶,清梵含吐,一唱三歎,密義抑揚,連環不輟。
  [梁 王僧孺:「初夜文」@「欽定古今圖書集成博物彙編神異典」第七十一卷 釋教部藝文四]

"色如〜"ではなく、"形如〜"と詠んでいるところを見ると、雪山白象の色が珂雪であるという意味ではなく、如来像の形が珂雪の雪山白象であると言っているのだろう。
釈尊も六牙白象に化身して娑婆に降臨し、摩耶夫人からクシャトリヤ階級[腕]として誕生した訳だし。 [「方広大荘厳経」]

肝心なのは、あくまでも象身潔白。その辺りは、このように、・・・
佛子!譬如伊羅鉢那象王,住金脇山七寶窟中,其窟周圍悉以七寶而為欄楯,寶多羅樹次第行列,真金羅網彌覆其上;
象身潔白,猶如珂雪,
上立金幢,金為瓔珞,寶網覆鼻,寶鈴垂下,七肢成就,六牙具足,端正充滿,見者欣樂,調良善順,心無所逆。
  [實叉難陀 訳:「大方廣佛華嚴經卷第四十三」十定品第二十七之四]

一方、"力"の方だが、こちらは雪山白象をしのぐ香象。・・・
譬如香象為人所縛。
 香象が人に縛られている所の如き状況であると。
雖有良師不能禁制。
 いかに良師が対応したと言えども、禁制などできかねる。
絶羈鎖自恣而去。 [瑣=鎖鏈]
 手綱を引きちぎってしまい、自ら悠然と去って行くだけ。
  [「大般涅槃經」卷第二 壽命品第一之二]

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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