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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.5.12 ■■■

玉器からの脱却

「山海経」では山毎に、玉を産するか否かを記載してあるような状態だし、祭祀でも多くの場合不可欠だったようである。 [→「玉石類出自」]
そこらは、成式も気になっていたに違いない。・・・

凡節,守國用玉節,守都鄙用角節,使山邦用虎節,土邦用人節,澤邦用龍節,門關用符節,貨賄用璽節,道路用旌節。
古者
安平用璧,
與事用圭,
成功用璋,
邊戎用
戰鬥用
城圍用環,
災亂用雋,
大旱用龍,龍節也,
大喪用j。
 [卷一 禮異]

唐代は、ここで触れられている類のものは、"符節"と呼ばれており、魚符が基本とされていたようである。随身魚符(官門出入用身分証)を題材にしたと思われる話も収載されている。 [→「女神話」]

当然ながら、魚符管掌組織も編成されていた。(よく知られているのは虎符[将軍身分証]だが、統一規格化が進められたのであろう。)・・・
 "符寶郎"掌天子八寶及國之"符節",…
 一曰"銅魚符",所以起軍旅,易守長。
 二曰"傳符",所以給郵驛,通制命。
 三曰"隨身魚符",所以明貴賤,應召。
 四曰"木契",所以重鎮守,慎出納。
 五曰"旌節",所以委良能,假賞罰。

  [「旧唐書」巻四十三志第二十三職官二]

成式は、その魚符に至った変遷を簡単明瞭に示したかったようだ。
言うまでもなく、「周禮」に規定が収載されており、そこらをまずは整理したかたのだろう。・・・
掌節:掌守邦節而辨其用,以輔王命。守邦國者用玉節,守都鄙者用角節。凡邦國之使節,山國用虎節,土國用人節,澤國用龍節;皆金也,以英蕩輔之。門關用符節,貨賄用璽節,道路用旌節;皆有期以反節。凡通達於天下者必有節,以傳輔之。無節者,有幾則不達。
  [「周禮」地官司徒]
以玉作六瑞,以等邦國:王執鎮圭,公執桓圭,侯執信圭,伯執躬圭,子執穀璧,男執蒲璧。
 :
以玉作六器,以礼天地四方:以蒼璧礼天,以黄j礼地,以青圭礼東方,以赤璋礼南方,以白礼西方,以玄礼北方。皆有牲幣,各放其器之色。

  [「周禮」春官宗伯]

節を、2つに分類したようだ。
<国権象徴>
 玉節・・・国を守る。
 角節・・・都会と田舎を守る。
<邦国の武官・文官・使節用ID>
 [金属製][]・・・山邦に行く場合。
 [金属製]人節・・・土邦に行く場合。
 [金属製][]・・・沢邦に行く場合。[龍形符節]
 [竹製]符節・・・門や関。
 [-]璽節・・・印章(商品取引用)。
 [竹製]旌節・・・通行用。
基本は、ID用割符であろう。
しかし、それ以前は、祭祀用と戦争のためのチャームだったのである。それが、国家の重大事でもあったのである。・・・
  國之大事.在祀與戎. [「春秋左氏傳」成公十三年]
考えてみれば、古代の国家制度の本質を指摘した重要な文章かも。神権と王権が併存していたことを示唆しているとも言える訳で。
成式は以下のようにまとめている。・・・
<昔、使用していたタイプ>
 【孔の直径が肉幅より小さい。 (ドーナツ状の円盤の最重要祭礼用玉器)】
 ・・・平安の時
 圭/珪・・・大事の時
 璋・・・成功の時
 ・・・辺境防衛
 ・・・戦闘
 【孔の直径が肉幅にほぼ等しい。】
 /・・・城の包囲
 雋/・・・災乱
 龍/・・・旱魃
 【方柱状外形で長軸方向に円形の穴が貫通。】
 j・・・大喪
尚、ここに記載されていない玉器の名称としてはこんなものがあるようだ。・・・
 玉鉞・・・古典的な武器の象徴
  ・・・[海外西経] 夏后在舞蹈時:左手操翳,右手操,佩玉
 ・・・孔の直径が肉幅より大きい璧
 ・・・周囲小缺口タイプ

実際、揚子江流域の良渚出土品[5300-4200年]では玉器が目立つ。(特に、円盤の璧と柱状のj。)上記はそんな時代の分類なのであろう。

唐代の魚符主導と、祀&戎の玉を比較すると、かなりの飛躍があるのは明らか。
おそらく、成式はそこを考えてみたら、と言いたかったのであろう。

一番大きな変化は、儒教的統治による祭祀の再定義。これにより、玉が不可欠でなくなったのであろう。常識的には、5つの分野に分かれたということか。・・・
  神鬼祭祀
  冠婚祝賀
  葬儀
  出陣-凱旋採点
  外交使節歓迎式典


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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