表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.6.14 ■■■ 五穀穀類の話はすでに扱った。"玉格"篇に収録されていることに着目して読むべき、と。→ 「原初穀類」 版によっては、この他にも収録されていたりする文章がある。・・・ 九穀者: 黍,稷,稲,粱,三豆,二麦。 一方で、今村選択版では五穀が。上記の稲は欠落し、かわりに麻。但し、こちらは夢での対応だから、違っていてもおかしくはないが。・・・ 凢 夢五藏得五榖 肺爲麻 肝爲麥 心爲𥞫 腎爲菽 脾爲粟 [卷十一 廣知] 五藏とは言うまでもなく、五行のコンセプト。こんな風に規定されている。 肝_心_脾_肺_腎…五臓 ↓_↓_↓_↓_↓ 木_火_土_金_水…五行 ↓_↓_↓_↓_↓ 青_紅_黄_白_玄…五色 これに、五穀を当て嵌めることになるが、比較的多いパターンはこんなところでは。 青_紅_黄_白_玄…五色 ↓_↓_↓_↓_↓ 麦_黍_粟_稲_豆 そんな解説をみかけた訳ではなく、現代でも吉祥画として人気があるらしい"五谷粮食画"から想定しただけ。つまり、麥は穂の青々、黍は穀のママの赤黍、黍は脱穀した黄色、稲は白米、豆なら黒豆というところ。ご飯のシーンとは無縁。理念的な養生の意味でもなく、絵画材料として穀類を用いるなら、これが見栄えがよさそうというだけのこと。 と言うか、人々の色のイメージとして焼きついているのはこんなところではないかと想定したのである。 これはどう考えても現代画法だが、発祥は唐代との説もあるようだ。信用しかねるが、五穀を飾る習慣がその辺りから始まったと見るのはおかしなことではなかろう。吉祥もさることながら、眺めていて気分が落ちつく効果はあった筈。 五臓が夢に登場するというのも、ナンダカネ臭いが、農耕開始神話的な死体化生を意味しているのだろうか。あるいは、養生感覚が頭にこびりついている人が少なくなかっただけかも。 ただ、成式が引いてきたこの話には稲が登場していないから、北方でのことなのだろう。 麦_黍_粟_稲_豆…一般 ↓_↓_↓_↓_↓ 麥_𥞫_粟_麻_菽…「酉陽雑俎」 [菽=大豆] 勝手に一般的としているが、五行と五穀の対応もさることながら。5つの選択自体が決まっている訳ではないからご注意あれ。 以下に示す通り、その選択はバラバラ。無理やり五行化したかったが、上手くはいかなかったことを示している。 夢見の五臓対応では、稲が無いゾというのは、マ、その辺りの成式の見地。 同じように、成式ならまず間違いなく9穀と言い出すだろうとの、編纂者の感覚で上記の文章が入った可能性もあろう。 ─・─・─五穀─・─・─ [ご注意] 孫引きなのでミスもあろう. 「周礼・天官・疾医」鄭玄注 麻_黍_稷_麦_豆 「大戴礼記」曾子天円注 黍_稷_麻_麦_菽 「周礼・春官・小宗伯」鄭玄注 稲_黍_稷_粱_麦_苽 「孟子・滕文公上」趙岐注 稻_黍_稷_麦_菽 「素問・蔵気法時論」王冰注 粳米_小豆_麦_大豆_黄黍 「管子・軽重己」 (五谷) 「論語・微子」 (五谷) 「楚辞・大招」王逸注 稻_稷_麦_豆_麻 「呂氏春秋」…6種である。 禾(稷)_黍_稻_麻_菽_麦 「黄帝内経・素問・臓気法時論篇第二十二」王氷注 粳米_小豆_麦_大豆_黄黍 「成就妙法蓮華経瑜伽智儀軌」 稲穀_大麦_小麦_則豆_白芥子 「建立曼荼羅護摩儀軌」 大麦_小麦_稲穀_小豆_胡麻 「古事記」 稲_麦_粟_大豆_小豆 「日本書紀」 稲_麦_粟_稗_豆 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |