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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.7.29 ■■■

揚子江海豚

どう考えても、イルカ/海豚以外に考えられぬ話が収載されている。
感覚的にはゾウやカバと同じ「肌」類だが、海棲なので「卷十七 廣動植之二 鱗介篇」に入るのであろう。
   「東アジアの民俗的分類」[2013.5.2]

海棲哺乳類であると、はっきり書いている。・・・

,奔一名,非魚非蛟,
大如船,長二三丈,色如鮎,
有兩乳在腹下,雄雌陰陽類人。
取其子著岸上,聲如嬰兒啼。
頂上有孔通頭,氣出作聲,
必大風,行者以為候。
相傳懶婦所化。
殺一頭得膏三四斛,
取之燒燈,照讀書、紡績輒暗,照歡樂之處則明。

[≒江豚別名@本草]は、[≒泉出貌]とも呼ぶ。
長さ2〜3丈で船のような大きさで、魚でもなく、鰐でもない。
[鮎とはナマズ]に似ているといっても、それは色である。おそらく、実物を見た印象なのだろう。腹の下に乳腺が2つあることも知っている位だから。♂♀の性器は、ヒトと似ていると指摘しているから、解剖で検討した可能性もあろう。
揚子江には、唐代は、かなり沢山棲息していたようで、子を取ったりできたようで、かわいそうに岸にあげると赤ん坊のように泣きわめくとの観察記録を淡々と。
頭頂の穴から気を出して々という音を出し、
そうなるとまずもって大風が吹くのだと言われていて
旅行者はそれを天候予測に用いている。
ものぐさな婦人が化けたとの伝説がある。

一頭を殺すと、3〜4斛の脂を採ることができる。これに火をつければ、燈明用の油に使えるものの、紡績作業や読書用としては暗すぎるが、歓楽用なら十分すぎる照度である。


この時代から、鯨油系が明かり用に用いられていたということになる。揚子江海豚の絶滅は、この時にすでに決定していたとも言えよう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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