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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.7 ■■■

松脂食虫の観察

ファーブル昆虫記の観察記録を読んでいるような気になる箇所がある。しかも、それがたった1行とくるから秀逸そのもの。・・・

【食膠蟲】,
夏月食松膠,
傳之,後聶之,内之尻中。

  [卷十七]廣動植之二 蟲篇]
夏の時期、松脂[松膠]を食べる。
前脚でこれを採り、後脚に回して、それを使って小さな音を立てる。
その上で、尻のなかに入れる。


膠だから、松脂ということだが、こう書くと樹脂のイメージが強すぎる。
ヤニと言っても、松系の樹木が出す"樹液"にすぎない。比較的早く固まるが、もともとは液体。これを好む虫がいてもおかしくない。
しかし、人間様の視点ではそれは、接着剤としての"膠"にすぎない。そこがこの文章のミソでもある。

この虫は、おそらく、日本〜中国に棲息する大葉切蜂/Giant resin bee
葉切蟻[→]的巣作りの蜂バージョンといえるかも。

名前から想像できるように、巣の構造材は木の葉である。これだけなら、多少は珍しいものの、ふ〜ん、で終わってしまうだろう。切った葉を蜜蝋で繋ぎ合わせたに過ぎまいと考えるからである。

ところが、観察結果はそうではない。

松脂を使うというのだ。わざわざ遠くから運んでくるのである。
体長にして2〜3cmに過ぎないから、葉を切ったり、松脂を固まらない前に遠くから運ぶ多大な労力を考えると、それに見合った効果は得られていないようにも思うが、生物の生態とは概してそんなもの。そんなことをする理由など、そう簡単に理解できる訳がないのである。

成式もそんなことを考えながら観察していたに違いない。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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