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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.8.9 ■■■

珍しい習性の水棲昆虫

今や、知る人ぞ知るの世界に陥ってしまった水棲昆虫に触れている。・・・

【負子】,
水蟲也。有子多負之。
  [卷十七]廣動植之二 蟲篇]

言うまでもないが、/子負虫/セオイムシである。
種類的には/タガメ/田亀の近縁。日本〜朝鮮半島〜台湾/中国に棲息。
どういう理由かは知らぬが、雌が雄の背中に産卵するのである。
結果、雄は、ご苦労なことに、孵化まで背中の卵を保護する役目を仰せ使うことになる。
ちなみに、タガメの場合は、産卵場所は背中ではないが、雄が卵の近くで見張番をすることになっているという。

成式は自邸の広大な庭の池で観察していたのであろう。もともとは、どこにでもいた種であるが、現代ではタガメ同様に稀に見かける程度。残念ながら、早晩、絶滅であろう。

成式は水棲昆虫観察は大好きだったかも知れない。
そうなると、水蟲を木喰い虫として考えた、「蟲本草」【溪鬼蟲】[→]の見方を変える必要があるかも。
とてつもなく激痛を与えたけしからんヤツとして収載した可能性もあるということで。手でつかんで、えらい目にあったので備忘録的に収載したと言うこと。・・・
【溪鬼蟲】
水蟲,象浦其川渚有水蟲,水食船,數十日船壞。蟲甚微細。抱搶,水蟲也。形如,稍大,腹下有刺似搶,如棘針螯人,有毒。
 [卷十七 廣動植之二 蟲篇]

針刺し的な記述になっているが、そこにこだわらず、水棲昆虫ではよくある口吻で噛まれた被害と解釈する訳である。
水草の生えた静水中なら、どこにでもいそうな/松藻虫/Backswimmersがソレ。
不用意に手でつかむことが多いのである。おそらく、唾液の刺激だろうが、蜂に刺されたような痛みである。
もっとも、タガメもおそらく咬まれれば痛いだろうが、見るからにそんな印象を与えるから素手で捕まえたりする人はいないだろう。もっとも、今の子供には当てはまらぬかも知れぬ。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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