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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.17 ■■■

猴郎達樹

天邪鬼的なお話。・・・

紫薇,北人呼為猴郎達樹,謂其無皮,猿不能捷也。
北地其樹絶大,有環數夫臂者。
  [續集卷九]

無皮の樹木とくれば、百日紅。
   「炎天下に咲く変てこな木」[2013.8.2]

"猴郎達樹"が猴滑 or 猿辷/サルスベリという名称の元ネタ。日本人からすれば、その辺りはフゥ〜ンと読むが、そんな呼び方をする人は唐代には極く稀だった筈である。

樹木名が何故に紫薇なのかは、左遷の地から戻って、やる気十分の白楽天の詩がすべてを物語る。
皆、帰ってしまった中央政府の中枢部門内に残り、一人で"絲綸[詔勅]"の山と格闘していて、ふと一息つくと、そこには、玄宗期に植えられた樹木が。こんな時間になってしまったかと思いつつも、そこには充実感。・・・
  「紫薇花」  白居易
 絲綸閣下文章靜,鐘鼓楼中刻漏長。  絲綸閣=中書省
 独坐黄昏誰是伴,紫薇花対紫薇郎。  紫薇郎=中書郎

成式的には、猴郎君、民のため頑張るのは結構なことだが、くれぐれも滑り落ちないように、と。
そこは、驚くべき巨大な組織であり、いつ下に墜ちてもおかしくない状況なのだ。

白楽天は、そんなことより、共に左遷された頃も朋友関係が続いた元のことを想いだしてしまうのだろう。かけがえのない友と一緒に眺めたかったものだとの気分にならざるを得ないのである。
  「見紫微花、憶微之」  白居易
 一叢暗澹將何比,淺碧籠襯紫巾。
 除却微之見應愛,人間少有別花人。
  微之=元

白楽天にはもう一つ。
  「紫微花」  白居易
 紫薇花對紫微翁,名目雖同貌不同。
 獨占芳菲當夏景,不將顏色託春風。
 潯陽官舍雙高樹,興善僧庭一大叢。
 何似蘇州安置處,花堂欄下月明中。


高級官僚は皆気になる樹木だったのだろう。
次の詩もそんな感覚に訴えるものあり。
「桃李無言」なら下自成蹊だが、もう肌寒くなりかけており、「桃李無実華」なのである。咲き誇った頃を懐かしんでどうするというのだ。今は、ただ猿滑だけが生き延びているのだから。・・・
  「紫薇花」  杜牧
 曉迎秋露一枝新,不占園中最上春。
 桃李無言又何在,向風偏笑豔陽人。


以下もご参考に。
  「和令狐相公郡齋對紫薇花」  劉禹錫
 明麗碧天霞,豐茸紫綬花。香聞荀令宅,入孝王家。
 幾歲自榮樂,高情方歎嗟。有人移上苑,猶足占年華。


  「和州楊侍郎翫郡齋紫薇花十四韻」  劉禹錫
 幾年丹霄上,出入金華省。暫別萬年枝,看花桂陽嶺。
 南方足奇樹,公府成佳境。拷A交廣除,明豔透蕭屏。
 雨餘人吏散,燕語簾靜。懿此含曉芳,然忘簿領。
 紫茸垂組縷,金縷鋒頴。露溽暗傳香,風輕徐就影。
 苒弱多意思,從容占光景。得地在侯家,移根近仙井。
 開尊好凝睇,倚瑟仍回頸。遊蜂駐綵冠,舞鶴迷煙頂。
 興生紅藥後,愛與甘棠並。不學夭桃姿,浮榮在俄頃。


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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