■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2013.8.2 ■■■

   炎天下に咲く変てこな木

杉浦日向子漫画の「百日紅」をとりあげたので、→ [2013.8.1] 樹木の猴滑にも触れておこう。
  散れば咲き 散れば咲きして 百日紅  [加賀千代女]

美的感覚は人によって違うからなんともいえないが、サルスベリの「好さ」とは、暑いさかりに、緑の樹木あるいは草いきれの傍らで、色鮮やかな花を咲かせている点だろう。春や秋とは別な感覚で眺めている訳で、一面のサルスベリとか、街路にズラーと並ぶ状況は小生はどうも馴染めない。余りに人工的な感じがするからである。
しかし、花木散歩を趣味とされる方にとっては、全く別だろう。
夏の花枯れシーズンに、沢山の花が自己主張するかのように咲き乱れる様子を愛でるのはことのほか嬉しいに違いない。そんな方々のためにサルスベリ園や観光道路も多々あるようだが、京王線片倉駅前/城址公園とか、代々木公園噴水池東側道路も結構お勧めかも。感覚が違うから、そりゃハズレと言われてしまうかも知れぬが。

まあ、頭のなかにすでにイメージができあがっていることもある。イヤー、変てこな木だなという印象だけがこびりついている訳だ。・・・
  真夏の炎天下に真赤に咲いてゐる、
  葉の無い、
  花ばかりが梢にある、
  肌のつる/\した木

ところが、現実には、よく見ると、全く違う。
  葉はあるのである。
  真赤な花は葉の先に咲くのである。
  真夏の炎天下には
    まだ花をつけはじめた時分で
    花の盛りではないのである。

     [高浜虚子 「百日紅」 1931年]


小生の好みは、人気がない静かな場所で、こじんまりと咲く風景。有る程度の広さの庭に咲いている姿こそ、これぞサルスベリという感じがする。
従って、お墓参りで混雑する時期を除けば、お寺の樹木は手入れが行き届いていることもありなかなかのもの。強烈な日差しに対抗するかのような樹木の存在は目に染みる。
別に、名所とされていなくても、そんな気分にさせられる場所はそこここにある。例えば、旧常盤松御所正門前のロータリーに植わっている3本の百日紅も旧御所の緑に映えなかなかのもの。駒沢通りで車から眺めるだけで、アー、夏だナとなる。この季節感が心を豊かにしてくれる。

公園内の場合、集団状態の植え込みになりがちで、派手な花が矢鱈目立つので、どうも、こうした感触が生まれにくい。ただ、夕刻になると人もいなくなり、樹木に染み入る蝉の声が耳に入ったりすると、嬉しいものである。と言っても、ヒグラシが鳴くような公園は今時そうそう無いが。

そろそろ咲き終わるかなと思う頃に台風到来というのが、かつての暦感覚だったと思うが、今は季節感そのものが消えつつある。梅雨自体があってなきが如きなのだから。

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