表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.10.28 ■■■ 桃枝竹どの竹か迷う記述がある。・・・東宮郡,漢順帝時屬南海,西接高涼郡。 又以其地為司諫都尉。 東有蕪地,西鄰大海。 有長洲,多桃枝竹,縁岸而生。 續集卷十 支植下 漢の順帝[在位:125-144年]が南海郡を設置した頃は、広州一体がまとまった地域だったのであろう。 そのなかに、東宮郡城と宝安県城があったようで、現深圳宝安国際空港近辺を指しているようだ。督察軍官が治める要衝となっていたということだろうか。 西にある高涼郡とは現在の広東恩平らしい。 東は耕地とはよべないものの、樹木を育てたり、草地利用ができる地で、西側は太平洋に繋がる海岸。 そこに砂州ができていて、その縁に"桃枝竹”群落があった。 桃枝竹は桃支竹とも記載するようである。 そんなこともあって、珍しく、今村は無視している。本当は思うところを書きたかった筈だがうが、東洋文庫出版物にする以上、致し方ない。魏志倭人伝に"其竹篠簳桃支"との記載があり、このような部分に下手に触れる訳にいかないから。 其竹篠簳桃支。 有薑橘椒蘘荷。 不知以爲滋味。有獮猴黒雉 まさか、篠竹が簳[矢がら]に使われており、桃が助けているとの文章とする訳にもいかぬだろうから、竹には、矢がら用の"篠"と"桃支"有り、という意味と解することになる。 そうすると、これは"桃枝竹"と見なすしかなくなる。 この竹は一体どれにあたるのか気になるではないか。 戴凯之:「竹譜」には以下のように記載されている。・・・ 篔簹射筒,箖箊桃枝。長爽纖叶,清肌薄皮。千百相乱,洪細有差。 数竹皮叶相似,篔簹最大,大者中甑,笋亦中射筒,薄肌而最長,節中貯箭,因以為名。 箖箊叶薄而廣,越女試劔竹是也。桃枝是其中最細者。 並見「方志賦」。桃枝皮赤,編之滑勁,可以為席。 「顧命篇」所謂“篾席”者也。 「爾雅」釋草 云: 四寸一節為桃枝。 余所見之桃枝竹,節短者不兼寸,長者或逾尺,豫章遍有之,其驗不遠也。 恐「爾雅」所載草族,自別有桃枝,不必是竹。 郭注加“竹”字,取之謬也。 「山海経」云: 其木有桃枝鈎端。 又「廣志」層木篇云: 桃枝出朱提郡,曹爽所用者也。 詳察其形,寧近于木也。 但未詳「爾雅」所云復是何桃枝耳。 經雅所説二族,决非作席者矣。 「廣志」以藻為竹,是誤謬后生学者往往有為所誤者爾。 特徴を勝手にまとめると、こうなるか。 竹の一種である。 稈の表面は滑らか。 黄色もあるが赤い色になったりする。 葉も枝も比較的細くしなる。 株立ちではなく、枝が一か樗から複数出る。 節間が狭い。 細かなことより、ポイントは、注目すべき種とみなされていたらしいこと。しかも、それは薬効というより実用性の観点で。それに関する記述はないものの、常識的には筍が美味しい上に、節が多いから竹杖になりそううだし、弾力性がよさげだから竹細工等にむいているだろう。 ということで、以下のなかからピッタリ合う竹を選ぼうと考えたのだが、これがなかなか難しい。 【C3型 木質茎(稈[カン])…笹竹類】 ---温暖系--- 寒竹 真竹 孟宗竹 亀甲竹 淡竹 布袋竹 業平竹 夜叉竹 阿亀笹 唐竹 東笹/籬竹 寿衛子笹 雌竹 根笹 東根笹 琉球竹 矢竹 屋久島竹 都笹 粽笹 千島笹 隈笹 篶竹[スズタケ] ---熱帯系--- 蓬莱竹 鳳凰竹 四方竹 [→] 「禾類」[2016.1.17] (皇居東御苑で実見可能な珍しい種:金明孟宗竹,亀甲竹,金明竹,黄金竹,蓬莱竹,蘇方竹,鳳翔竹,辣韮矢竹,紺縞竹,四方竹,寒山竹,陰陽竹) 稈色が暗赤紫的な種はあるが、そのような変種は存在するとして、節の特徴を考え、亀甲竹と似ている布袋竹[浙江〜福建原産ではないか.]というのが、小生の結論だがどうか。 尚、名称的には、大陸では、布袋とは呼ばず、竹が膨らんでいるので、羅漢、仏肚、観音と様々な呼び名がつく。そのような名称を避けるということで、枝ぶりと、実が詰まった稈の印象が、桃だネといったところでは。 (参考[photo]) "東御苑(本丸)の竹林"2014/12/03@丸の内・大手町・八重洲 旅行記(ブログ) (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |