表紙
目次

📖
■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.11.20 ■■■

星座の蠍

巨大なサソリ登場。・・・

【大蠍】,
安邑縣北門縣人雲:
 “有一蠍如琵琶大,毎出來,不毒人,人猶是恐。
  其靈積年矣。”
  [續集卷八 支動]
安邑県[現:山西運城の夏県北西部]
 つまり、黄河湾曲の地
(陝西・河南と対面)でのこと。
 ここは、魏の王都だったし、
 夏王朝の始祖禹の
王城遺跡とも。
ともあれ、その安邑城北門での話。
県人が言うには、
 琵琶の大きさの蠍が一匹おり、
 なにかといえば、出没するのだが、
 人に毒を向けることはない。
 しかし、人々は、猶、恐れる。
 その霊には、積年の諸々が詰まっていると見ているから。


ついでながら、河南最北部の周易発祥地と目される、夏の都でもあった地にも、大蠍の話が残っている。
安陽城南有一亭,…
書生曰:
 「促索劍來,吾與卿取魅。」
乃握劍至昨夜應處,果得老蠍,大如琵琶,毒長數尺。

  [干寶:「搜神記」卷十八]

この蠍だが、夏(中華)を倒した殷(商)の部族象徴かも。

両王朝は兄弟のようなものだが、互いに相容れない体質。
それを星座の"参"宿/腰帯三星/将軍星 v.s. "商"宿/心宿/天蝎座に絡めた話があり、以下に引いておこう。[28宿→「星祭り」]
(この手の発想なら、"漢"の発祥部族の象徴は月に昇った蝦蟇ということになるか。)
昔高辛氏有二子,伯曰伯,
季曰實沈,居于曠林,不相能也。
日尋干戈,以相征討。后帝不臧,遷伯于商丘,主辰。
商人是因,故辰為"商"星。
遷實沈于大夏,主"参"。
  [「左傳」]

尚、生物としてのサソリだが、最大の種はアフリカ大陸中西部に棲む帝王蠍 or 將軍巨蠍/大王蠍/Emperor scorpionとされる。体長30cm、体重30gである。
それよりは若干小振りなのが、東南アジア熱帯雨林棲息の亞洲森林蠍/茶黒蠍/Giant forest scorpion。毒はそれほど強くないとの記述もあるが、その辺りの実情はよくわからない。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>>    トップ頁へ>>>
 (C) 2017 RandDManagement.com