表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.5 ■■■ 崖上に生える仙人御用達樹一見、豆科の樹木の話と思いがちな記載。・・・獨梪樹,頓丘南應足山有之。 山上有一樹, 高十余丈,皮青滑似流碧,枝幹上聳, 子若五彩囊,葉如亡子鏡, 世名之【仙人獨梪樹】。 獨梪樹とは、単に、豆が成る単独の巨木ということだろう。 場所は、兗州東郡頓丘県[@現 河南濮陽清豐県西南]應足山。 樹高は、10丈を越す。 皮は青色で滑らか、 まるで流れている碧玉のよう。 枝も幹も上方にそびえ立つ。 果実は五彩の巾着嚢の如し。 葉は亡子鏡に似ている。 世間では、この木の名前を"仙人獨梪樹"としている。 わからない語彙があるので、私註をつけるとこんなところ。・・・ 五彩囊は貴重な珠を入れる嚢のことではないか。 初,豐好方術,有道士言豐當為天子,以五彩囊盛石撃豐肘,云石中有玉璽,豐信之,遂以反。 [「太平御覽」石上] 亡子鏡は知る人ぞ知る類のもの。 百済 武寧王[在位:502-523年]の陵に埋葬された棺が日本金松材製だったことが知られるが、服葬品に三面の青銅鏡がある。腐食していてるようだが、青銅神獣鏡、獣帯鏡、宜子孫獸帯鏡("宜子孫"銘文と四霊獣)。 [→(C) GONGJU NATIONAL MUSEUM, Republic of Korea] 日本での出土品と同型であり、おそらく、中華帝国南朝の鏡が原形であろう。 「亡子鏡」とは、この手の鏡を指すのであろう。ちなみに、"宜子孫"は紐の周囲に丸い突起が9つあり、その外周にも7つの突起というデザイン。 さて、それでは、この樹木は何かとなるが、すぐには思いつかない。 しかし、小生的には、結論は出ている。 似ているとは言い難いところがあるが、針葉樹の東北紅豆杉, 紫杉 or 赤柏松/一位/イチイ/Japanese Yewの類縁である、紅豆樹 or 觀音杉/中国一位/Chinese Yewと見る。もちろん豆類の樹木ではない。 樹高は14mで棲息地は900m以上とされており、栽培剪定した樹木だと、枝幹が上向きの整った樹形になる。 葉の形は鐮刀状で、葉底に二本の黄色気孔の帯がある。果実の色は真紅。 葉や種には極めて有毒なアルカロイドが大量に含まれており、牛馬は食べると死ぬが、鹿は分解可能ではないかと見られている。鹿棲息地では、崖の上に一本だけ残存していたりするからである。 参考→ 「呪術木」[2012.10.9] (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |