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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.11 ■■■

氣袋

「長安の奇譚」[→]としてとりあげた話を、再度見ておこう。・・・

元和中,[長安東1条]光宅坊百姓失名氏,
其家有病者將困,迎僧持念,妻兒環守之。
一夕,衆仿佛見一人入戸,衆遂驚逐,乃投於甕間。
其家以湯沃之,得一袋,蓋鬼間所謂氣袋也。
忽聽空中有聲求其袋,甚哀切,且言:
 “我將別取人以代病者。”
其家因擲還之,病者即愈。

家に病人が居り困っていたので、僧侶を迎えて持念。
妻子と周囲はこれを遵守。
ある夜のこと、…

ヒトの気が抜き取られ"氣袋"(""とは痙攣の意味。)にためられており、病の治癒とはその袋が破れることと考えられていた。病人回復のため、その袋を持つ鬼退治をすることに。鬼がいそうな場所で色々とオマジナイをすると、たちまちにして全快。

「續集卷二 支諾皋中」には、同じ年代で、この袋の話がもう一つある。・・・

元和中,有淮西道軍將使於汴州,止驛。
夜久,眠將熟,忽覺一物壓己。
軍將素健,驚起,與之角力。
其物遂退,因奪手中革,鬼暗中哀祈甚苦。
軍將謂曰:
 “汝語我物名,我當相還。”
良久曰:
 “此氣袋耳。”
軍將乃舉甓撃之,語遂絶。
可盛數升,無縫,色如藕絲,攜於日中無影。

元和年間のこと。
淮西道の将軍が使いで州の駅に留まった。
夜も更け、将軍熟睡。
忽然と、何モノかに圧迫されていることに気付いた。
将軍は素より強健だったから、驚いて起き上がり、
このモノと力比べになった。
そのモノ、ついに撃退されたのだが、
奪って手中に残ったのが皮革嚢。
そやつは鬼だった訳だが、暗闇の中で、
このお蔭で甚だ苦しいと哀願する始末。
将軍は言ってやった。
 「それなら、
  汝、自ら名を名乗れ。
  さすれば、吾輩もそれに免じて還してやろう。」と。
相当しばらくしてからだが、返事があった。
 「此れ、氣袋の耳なり。」と。
将軍、さかさず、壁に挙げて、コレを撃った。
すると、言葉が途絶えてしまった。
その嚢だが、数升を盛る容量があり、縫い目が無かった。
色は藕絲に似ていた。
驚いたことに、日中でも、影ができないのである。


(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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