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■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.19 ■■■

古書購入の楽しみ

古書を購入すると奇妙なものが入っていたりするという話。[續集卷二 支諾皋中]・・・

建中末,書生何諷常買得黄紙古書一卷。
讀之,卷中得發卷,規四寸,如環無端,何因絶之。
斷處兩頭滴水升余,燒之作發氣。
諷嘗言於道者,曰:
 “君固俗骨,遇此不能羽化,命也。
  據《仙經》曰:
   蠹魚三食神仙字,則化為此物,名曰脈望。
   夜以規映當天中星,星使立降,可求還丹。
   取此水和而服之,即時換骨上賓。”
因取古書之,數處蠹漏,尋義讀之,皆神仙字,
諷方哭伏。

建中末[783年]のこと。
書生の何諷が防虫用に黄蘗で染めた紙の経典の古書1巻を購入した。
讀んでいると、巻の中に、髪を巻いたものが入っていた。正確に4寸で、環のようなドーナツ形で端が無かった。どういう事かわからず、断ち切ってみた。
切断した箇所の両方の端から水が滴り落ちてきて、その量は1升に達した。
そこで、焼いてみたところ、髪の臭いが立ち昇ってきた。
何諷は、嘗て、このことを道教の人に言ったことがある。
すると、その人は懇請するかのように語った。
「君は、卑しい気質に拘泥しており、まことに気の毒。
 こんなものに出遭いながら、羽化できなかったとはなんとも。
 マ、それが君の運命なのであろう。
 長生不死神仙術の道教経典「仙經」によれば、

按仙經以為諸得仙者,皆其受命偶神仙之氣,自然所禀。[「抱朴子」内篇 辨問]
 蠹魚/紙魚が神仙の字を三度食べると、即、そのものズバリ変身する。
 そうなった時の名前は"脈望"。
 夜、それをコンパスのように使って照らし、天中星が環の中に当たれば、星から使者が降臨する。そうすれば、不老不死の還丹を求めることができるのだ。
 切断して出た水を取って、服用すれば、即時、換骨できて、上賓になれるのに。」と。
それを聞いて、何諷は古書を閲読してみた。
数箇所、紙魚の虫食いの跡があった。
それらは皆神仙の字だった。
何諷は急に伏し、慟哭。


シミは棲む場所で、紙魚、衣魚、壁魚と違った名前で呼ばれていたようだ。尾尻から毛が左右に一本づつとび出ており、外皮が鱗的なのが特徴である。その独特な色調については、「紙魚ならぬ壁魚」[→]でとりあげた。

紙魚は、道教的に価値ある虫とされているから、色は五色あるのかも知れない。
ただ、紙魚と環状の物体との関係はわからないから、これは紙魚の仕業ではないかも。紙を食べる他の虫としては、死番虫と茶立虫が知られる。

マ、本の虫の成式先生としては、この話は収録せざるを得なかったのさろう。

(参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載.

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