表紙 目次 | ■■■ 「酉陽雑俎」の面白さ 2017.12.21 ■■■ 蛭石伸びる石の話。・・・[續集卷二 支諾皋中]於季友為和州刺史,時臨江有一寺,寺前漁釣所聚。 有漁子下網,舉之重,壞網,視之,乃一石如拳。 因乞寺僧置於佛殿中,石遂長不已, 經年重四十斤。 張周封員外入蜀,親睹其事。 季友が、 [贈太保頔子。尚憲宗女永昌公主,拜駙馬都尉殿中少監。太和時出為明州刺史。] 和州[@安徽鞍山和県]の刺史をしていた時のこと。 (近辺には、項羽が逃亡を拒否し漢軍に殺されることを決意した烏江浦がある。) その頃、長江を臨む場所に寺があった。 寺の前は漁師や釣り人達が集まる場所だった。 ある漁師が網を下ろしたところ、引き挙げるのが重く、 網が壊れてしまった。 よくよく視ると、拳ほどの大きさの石が1個入っていた。 よって、寺の僧侶にたのんで、佛殿の中に置いてもらった。 ところが、その石は長さが伸びて止まらず、 年を経ると重さ40斤に達した。 (「酉陽雑俎」記載文にはちょくちょく登場するレポーターである、[→]) 工部員外郎の張周封が 蜀に入った時に、自らその事を目撃した。 重い石が網にかかったのだろうか。 そうなると、磁鉄鉱か方鉛鉱の可能性があるが、珍しい石として奉納するようなものではない。そうなると、隕石かネ、となろう。 しかし、石が伸びる訳がないから、コリャナンダカネ〜で、考えるのを止めてしまいがち。 読み返してみると、網が重かっただけのことで、石が格段に重かったとは書いていない。 そうなると、この発想は、間違っていそう。 石が伸びるという、奇怪に映る現象に注目すべきなのであろう。 どうも一方向に伸びたような書きぶりだから、考えてみれば、そんな候補は存在する。 蛭石/苦土蛭石/Vermiculiteである。 密度は一定しないが2.5程度であろう。 但し、珍しい石ではない。当該地域の人々には全く知られていなかった可能性はあるが。 今でも人工的に風化させて粉々にしたものが、年間50万t(世界)程度使われているそうで、中国は主生産地の一つ。身近な用途としては使い捨てカイロの基材や種蒔き用土である。 わかり易い名称にするなら、黒雲母風化石あるいは金雲母風化石。層状珪酸塩の層間に水分を多量に含んでいるため、急加熱すると水が沸騰し膨張するので、石が伸びるのである。お寺で、そのような状況があったいうことなのであろう。 寺僧がこれは面白い現象ということで、時々、より大きな石を見つけてきて入れ替え、その度ごとに蛭石の伸びを見せていたのだろう。 (参考邦訳) 段成式[今村与志雄 訳]:「酉陽雑俎」東洋文庫/平凡社 1980・・・訳と註のみで、原漢文は非掲載. 「酉陽雑俎」の面白さの目次へ>>> トップ頁へ>>> (C) 2017 RandDManagement.com |