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2002.7.21
 
 


大学生の質は落ちていない…

 先日、「大学生の質は落ちていない」との話を聞く機会があった。大学生の数が増えたのだから、平均で見れば質は低下する。レベルが落ちている訳では無い、と語る。
 90年代末から、様々な形で事実が指摘されているにもかかわらず、相変わらず認めようとしない。大学人なら、現実を知らない訳はないのだが。

 例えば、大学院で助手をされている先生の話を聞けば、その深刻さは一目瞭然だ。(2000年に行われた森山和道氏の東大本郷でのインタビュー録:2000/08/10 NetScience Interview Mail)
 2年9ヶ月ぶりの大学で、みんなが言う通り、学生が低レベルなのがわかった、と語っている。理科離れ以前の問題だと指摘している。
 「最初に背景を書いて、目的を書いて・・・研究方法を書いて、結果を書いて、考察を書いて、まとめてといったことは、いくらなんでも、そこまでは分かっているだろうと思っていたんですが、それすらできない。まず字が、文が書けない 」
 「何が問題かというと、自分の頭で考えようとしない。・・・非常に素直・・・言われたことはちゃんとやります。でもそれ以外のことはできない。言われたことしかできない。自分で考えてやれといったら止まっちゃう。 」

 誰が考えても、この有様で大学から成果が生まれるとは思うまい。それ以上にこわいのは、このレベルの工学部修士が産業界に入ってくることだ。

 これは東大の修士の話である。企業で行っていた非大卒社員の指導と同じことを、東大の修士に対して行っている、と嘆いておられる。この先生と学生はたった1世代の違いにもかかわらず、大学の状況は一変しているのだ。

 普通の神経だったら、こうした話を聞けば、危機感を抱かざるを得まい。即座に、原因探索と緊急対策に移るのではあるまいか。
 しかし、不思議なことに、危機を訴える声はかぼそい。その一方、この状況をひたすら隠蔽する主張は聞こえてくる。


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