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2002.12.28
 
 


帰納法ができない優等生…

 「帰納法」というと、技術系と呼ばれているビジネスマンでさえ、忘却のかなたの用語だ。
 しかし、それは用語を忘れているだけで、頭脳労働にたずさわっている人なら、日常的に使っている手法である。
 様々なデータを集め、そのなかから、重要と思われるものを抜き出し、独自の理屈をつけ、結論を出す作業は、ごく当たり前の仕事だ。

 従って、「帰納法」のスキルは、ビジネスマンにとっては不可欠といえよう。
 実際、論旨が明快で、気付かないポイントを指摘する人は、皆から信奉される。この能力が優れている人がリーダーシップを発揮することが多い。能力に大きな差はあるが、皆、スキル向上に励んでいるのだ。
 そのため、「帰納法」のスキルは、熱心に仕事をしていれば自然に向上すると考えがちだ。

 ・・・ところが、現実は違う。

 最近の新卒は「帰納法」が全くできないのである。できないだけでなく、その能力を得たいとも思っていない人が多い。

 彼等にできるのは、教えられた理論をもとに結論を出す方法である。優等生ほど、数多くの理屈を覚えており、短時間で結論を導き出せる。わかりきった問題でも、解決策はすぐにわからないから、このような優等生に手伝ってもらうと大変便利である。しかし、それだけである。新しい発見や、異なる見方の提起は、皆無に近い。
 「帰納法」など、始めから眼中になく、「理論」で仕事をするのが専門家と考えているのだ。

 驚くべき勘違いである。このような「優秀」な人材を多数抱えた企業は悲劇である。新しい知恵は生まれない。

 教育における創造力強化との掛け声だけはりっぱだが、現実に輩出された人材には、創造性のかけらさえ感じない。


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