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2003.2.2
 
 


悪化する博士就職問題…

 理工学系の博士課程修了者が急増している。(下図参照)
 科学技術立国方針にのっとり、定員を増やした結果である。政策通り、着々と進んでいるといえよう。

 しかし、彼等の進路を見ると、驚く。研究職は限られているため、ポスト待ちに徹するつもりだろうか。非就業者数が極めて多い。(下図参照)
 
 このため、研究機関が中心となり(大学は制約上動けない)ポスドク雇用が進んでいる。しかし、毎年、膨大な非就業者が登場するのでとても追いつけまい。早晩、40才代のポスドクが溢れかえる。対処できなくなるのは、明らかだ。
 博士を増やして、国家としての科学技術レベル上昇を図る方針は破綻しつつあるといえよう。

 就職問題を解決するために、産業界は博士採用を増やせ、と言う大学関係者がいる。驚くべき言辞である。産業界は、メリットがある人材なら、大卒や修士修了者より優先して採用する。
 問題は、相変わらず、産業界に向く人材を創出しないことにある。アカデミズムのポストは増えないにもかかわらず、産業界には無関心なのだ。
 ところが、その一方で、大学はベンチャー創出に忙しい。本気でベンチャーを創出するつもりなら、非就業者から大勢の起業家が輩出される筈だ。ところが、そのような動きは見えてこない。工学でありながら、できる限り産業に係わらない博士を生み出すのが、現在の課程の特徴だ。
 大学がこの風土を変えない限り、無職の博士課程修了者がアカデミズムをさまようことになる。

 こうした風土問題は根が深いが、それでも、優秀な博士を輩出しているのなら、産業界も対応できた。
 ここまで問題を悪化させたのは、無原則とも思えるような、博士大量供給を優先した点にある。実情を見ると、大学院に入り易くして、本来は博士課程に進むべきでない学生まで採用したとしか思えない。
 そもそも、博士は少数精鋭で育成、との認識が、学生にも大学当局にも無いようだ。

 実際、受け入れ側にポスドクの効用に関してインタビューすると、驚くべき話が次々ととびだす。例えば、「ここだけの話」として、先生から頼まれて仕方なく雇用しているだけ、と言う人がいる。質が悪いから、ポスドクは単なる労働力に過ぎない、との醒めた意見もある。
 産業界でなくとも、このような極端な意見を述べる人がいるということは、博士課程修了者の質に相当なバラツキがあると考えて間違いない。

 これは、不適格者をはねるハードルが用意されていないことを意味する。博士を効率的に生み出すために、エスカレーター型の仕組みに変えつつあるのだろう。

 その一方で、極めて優秀な博士を輩出している特定の研究室を指摘する人も多い。
 そうなると、このまま進めば、「悪貨は良貨を駆逐する」ことになりかねない。

 ハードル作りは緊要な課題と思われる。施策は簡単である。例えば、指導教官が、「2年間でファーストオーサー論文」と決めるだけでも効果てきめんだ。
 できることから、早く手をつけないと、博士問題は大変なことになる。



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