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2004.4.20 |
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ピント外れの科学離れ防止策…毎日Interactiveに、内閣府による「科学技術と社会に関する世論調査(1)」の結果が紹介されている。(2)科学技術に関心ある人が減少しており、「関心ない」が「ある」を上回るというもの。 「特に女性と29歳以下の若い世代に無関心層が多い」という。 要するに、若いほど科学への関心が薄れるのだ。 今や、興味を持つのは団塊の世代くらいかもしれない。 このため、理科教育がどう見られているかも調査対象になっている。 その結果、「「理科授業」への共感度は、ゆとり教育世代の18〜29歳では26.6%」しかないのがわかった。 驚くほどの少数派である。 どうも、授業と科学への関心が直接関係するとしたいようだが、この論理には飛躍がある。 生徒は、学校の授業は科学と無縁の単なる暗記モノと見ているだけかもしれない。そのようなつまらぬ授業に期待する生徒がいるとは思えないし、実際、科学的物の見方を形成するのに役に立つこともあるまい。 それでは、授業を変えれば、なんとかなるものだろうか。 おそらく、そんな単純な問題ではない。 このデータからははっきり読み取れないが、科学者や技術者が遠い存在になっていることが、無関心化の主要因である可能性が高いと思う。 若い層が抱いている、科学技術に係わる人物像は、団塊の世代とは大きく違うのではないだろうか。 科学者とは、自分勝手に、技術の進歩を進めるだけの、かなり偏った思想の持ち主との印象を持っているかもしれないのである。 実際、最近の報道を見ていると、社会のために研究している科学者や技術者などいそうにない、との印象を与えかねない。 科学者や技術者のほとんどが、ものを言わないため、ノーベル賞受賞者の発言ばかりが伝わってくる。 例えば、誰でもが知る、田中耕一さんや小柴昌俊さんの発言を聞いていて、若い人達が、そのような人になりたい、と思うかは疑問である。人柄に惹かれる人が多いと思うが、お二方が、何のために科学技術を追求しているのか、ピンと来た人は少ないだろう。 田中耕一さんは、企業内で活動していても、企業人として積極的に活躍する気はなさそうである。 しかも、本人自ら、失敗した実験の結果を調べていてたまたまわかっただけの話しで、余り騒いでくれるな、という調子で語る。企業収益には貢献できなかったが、自由に外部に技術を使わせたから、活用が進んだ、ととれるような主張も聞こえてくる。 団塊の世代なら、このような田中耕一さんの姿勢そのものが魅力的に映る。技術を純粋に追求するだけで、実利を求めない態度に接すれば、応援したくもなる。 しかし、自らの将来を考えている、若い人達は違った見方をするのではないだろうか。 企業のなかで、収益をあげることに無頓着で、研究ばかりに勤しむ人が、技術者なのだ、と見なすのではなかろうか。下手をすると、自分の興味で、技術開発にのめり込むだけの人、とされてしまう恐れさえある。 当然ながら、このイメージでは、若い人達の「目指したい人物像」にはなるまい。 技術者の魅力が低下する可能性は高い。 小柴昌俊教授も謙虚な発言に終始した。 そのため、お金をかけて、精密な測定が可能な特別な装置を作れば、このような発見は必然だ、との印象を与えてしまう。マスコミも、世界に冠たるセンサーを提供したメーカーこそが影の力ともてはやすから、科学者とはそんなものか、と見なされてもやむを得まい。 といっても、団塊の世代は、そのようなことは始めから枝葉末節と見なす。湯川秀樹博士の授賞以来、理論物理や実験物理のような、実利がなさそうな分野でも、世界の科学の最先端を走る日本人科学者が登場するだけで、ことのほか嬉しい。 だが、若い層がそのような発想をするとは思えない。 社会にどのような貢献をするのかわからないが、金を集めてきて、面白そうなことを徹底的にやっているのが、科学者だ、と見なされているかもしれない。 このような状況を十分認識しておくべきだろう。 そうでないと、下手をすると調査結果を読み間違えてしまう。 例えば、こうしたデータを見て、若い層が科学技術が嫌いになった、と指摘する説があるようだが、いかにも怪しい。 若者の実態を見れば、すぐにわかる筈である。 MDのヘッドフォンをつけた通勤・通学は、日常生活そのものである。自ら、好きな音楽を編集しているのだ。 そして、ケータイを日夜駆使する。様々な用途を自ら工夫し、特殊な文字まで創造した。 テレビゲームに至っては、この層が産業勃興に一役かったのである。 どう見ても、若年層は、先進技術大好き人間なのである。 しかし、このような技術と、教育現場の「理科」は全く異質なものと見なされているのは確かだ。 理科教育が現実から遊離しているのである。 一番の問題は、大好きな「技術」を開発している人達のイメージがゼロという点だ。科学技術者とは、田中耕一さんや小柴昌俊教授であり、ケータイを作りだした技術者ではない。 これでは、科学技術に携る人達に親近感が湧く筈があるまい。 「科学離れが進んでおり大変な問題だ。学校だけでなく、地域や家庭が一体となって関心を引き上げていくことが重要」(3)とのコメントはピントが外れていると思う。 --- 参照 --- (1) http://www8.cao.go.jp/survey/h15/h15-kagaku/index.html 「本報告書の内容を引用された場合,その掲載部分の写しを下記宛に御送付下さい。」 との記載があるため、原典からの引用は避けた。 (2) http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/science/news/20040411k0000m040070000c.html (3) http://www.kyoto-np.co.jp/kp/topics/2004apr/10/K20040410MKC1Z100000032.html 教育の危機の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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