↑ トップ頁へ |
2005.1.1 |
|
|
校舎から感じる熱気…北上川沿いの伊達氏二万一千石の城下町、登米町(1)に鰻(2)を食べに寄った。登米圏は「ろまん街道」整備が進んでおり、登米町中を歩きながら見て回れる範囲にも資料館が揃っている。(3) そこで、旧登米高等尋常小学校校舎を見学した。期待して訪ねた訳ではなく、ついでに立ち寄っただけだが、感動を覚えた。 → 登米町商工会による「教育資料館」紹介 [ビデオ映像 (C) 登米町商工会] この木造二階建て校舎の設計者は、ウィーン万博日本館を建てた地元出身の棟梁だという。欧州の建物を研究した成果をもとに、1888年に建造したそうだ。 校舎にはコの字型に教室が配置されており、教室前面は吹き抜け廊下になっている。廊下から庭が一望でき、お洒落な造りだ。 明治の建築好きには、嬉しくてたまらない建造物だろう。 ・・・しかし、建築に興味が無くても、教室を歩いていると、それだけで楽しい。生徒が意欲的に学んでいた当時の熱気が伝わってくるような感じがするからだ。 といっても、単純なノスタルジアではない。 今でも、現役で使えそうな校舎であることがわかるから、心に沁みるのである。 これが、とても100年も経過した建物には見えないのだ。 ということは、生徒達に大事に使われてきたことを意味する。 教育こそ飛躍の鍵と考えた時代に作られてから、この校舎には、深い愛情が注がれ続けて来たに違いない。 明治期だから、潤沢なお金があったとは思えない。しかし、当時の人々は、先進国を学ぶべく、素晴らしい学び舎を作ったのだと思う。こうした行為への感謝の気持ちが、校舎への愛着や、一生懸命学ぶ姿勢に繋がったのである。 ・・・と想いを巡らしていて、松本城の近くにある旧開智学校(4)を思い出した。 こちらは、1876年建造で、90年もの間使われたそうである。 眺めるだけで不思議な建物である。寺院で見かけるような、唐風破風装飾の玄関に、天使が抱える看板が掲げられている。全体を眺めると、蔵造りの雰囲気も漂わせているが、中央には洋風の塔が設置されている。和魂洋才ということだろうか。 外観を見るだけだと、異様な建造物という印象を受けて終わってしまいかねないが、歴史を知ると、その意義が伝わってきて、異なるイメージが浮かんでくる。 巨額な工費の大半は、松本町の全住民の戸別献金で調達したというのだ。地元の棟梁は、この意向を受けて、日本一の学校建築を目指して設計したのである。(5) 教育こそ、最重要投資であると皆が納得し、地域をあげて全力投球した訳だ。その「文明開化」の熱気が、この和洋渾然とした建物に凝縮されている。 そして、地域の人達は、この心意気を大事にしてきたのだと思う。 今や、こうした熱気を忘れてしまった地域ばかりである。 どこへ行っても、立派な学校ばかりだ。 もちろん、災害時に対応するために堅固な建築にしている面はある。しかし、その機能を越えた素晴らしい建築物が多い。 ここだけ見れば、昔と同じように、教育投資に熱心と言えないこともない。 だが、自信をもって、教育優先政策を推進していると語れる地域がどれだけあるだろうか。 外から見る限り、学校建築は公共投資としての意義しか感じられない。「文明開化」時の教育に対する熱気とは程遠い。 今、教育にとって重要なのは、素晴らしい校舎を作ることではない筈だ。 にもかかわらず、過疎化が進んでいるのに、立派な校舎を作ったりする。驚くべき、教育重視策である。 将来を見据えれば、こうした地域が、何をすべきかは自明だと思う。 地域発展に貢献できる人材を輩出する教育が求められており、その観点での教育の質の向上が緊要課題の筈だ。 校舎建築にお金を投じる位なら、優れた教育者を呼び寄せるとか、新しいカリキュラム開発を行うのが筋ではないのか。 ところが、肝心なことには手はつけない。すぐに地域雇用を生みせるから、校舎つくりの方にお金を回すのである。 昔からの学び舎を大事に使ってきた登米や松本の「心意気」こそ、教育の原点だと思う。 --- 参照 --- (1) http://www.town.toyoma.miyagi.jp/ (2) 天然ものは7月〜11月 http://www.toyoma.miyagi-fsci.or.jp/html/gurume/gurume8.htm (3) http://www.miyagi-kankou.or.jp/tome/03-rekishi/tanbou-a.html (4) 2005年7月31日まで、保存修理工事のため休館 http://www.city.matsumoto.nagano.jp/www_cbox/html/mcseum/hakkaiti/hakkaiti1.html (5) http://www.yomiuri.co.jp/tabi/isan/20001224sd01.htm 教育の危機の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2005 RandDManagement.com |