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2007.10.26
 
 


沖縄の学力問題を考える…

 2007年10月24日、全国学力・学習状況調査の結果が公表された。お金をかけた大規模なものである。
 報道を逐一見ている訳ではないが、基本的知識は身についているものの、応用力に課題あり、とのステレオタイプな解説がなされているようだ。
 そんな見方でよいか、じっくり考えた方がよさそうだ。

 そう感じたのは、どのテストでも、沖縄県の成績が全国平均をかなり下回っているからだ。
 沖縄の人達も、全国最下位の成績というので、仰天したらしい。(中学校の結果も同じようなもの)(1)
沖縄県と全国平均の差(1)
(正答率%)
小学校国語
知識 活用
小学校算数
知識 活用
-5.0  -9.0 -5.8  -9.3
 たいていの県は、ドングリの背比べだが、 他の県に比べて、公教育に相当に投資した筈なのに、目だって悪い成績だから、驚くのも無理はなかろう。
 しかも、読書が好きだったり、将来の夢を持つと言う点では平均を上回るのである。

 全国一律の教育課程を経ている小学校6年生で、どうしてこれほどの差が出てしまうのだろうか。

 それはともかく、結果を平均点で見るのはよした方がよかろう。
 このテストは入試のように、差をつけたい訳ではない。基礎が身についているか確認するものだ。
 従って、あるべき姿は満点。そこに近い人をどれだけ育てたかを見るべきだと思う。

 なかでも、「知識」のテストは、基礎として絶対に覚えておかなければこまるものを対象にしているのだから、満点の児童が一番多い筈である。
 理想論に聞こえるかも知れないが、そんなことはない。

 試しに、沖縄県と東京都の児童のテスト結果を正答数(ゼロ〜満点)分布で比較してみた。棒グラフは見にくいので折線だが、状況は読み取れると思う。
(公立のみ. 私立は参加していない学校があるため.)


 東京の算数知識での分布パターンがわかり易い。この手のテストでは、満点が一番多く、点数が低くなるにつれ、人数は激減する筈なのである。そうならないならば、教育に問題があるか、試験問題が不適ということだと思う。
 “力がついた”と言えるのは、間違いがゼロ(100点)から、せいぜい不正解2問まで、といった所だろう。そんな成績の児童が全体のどの位を占めているかを見る必要があろう。8割は欲しいところだが。
 現実の数字では、東京は57%、沖縄が37%である。

 そして、もう一つ重要な数字としては、正解数が半分以下(50点以下)の児童の割合だ。これはなんとしても、5%に抑えるべきである。つまり、40人学級で、どうしても授業についていけない児童が2人いるといった所。

 こちらは、東京は7%、沖縄は11%だ。

 これらの数字を見るとわかるように、沖縄の状況はかなり悪い。
 低い点数の児童がこれほど多いと算数の授業はしずらいのではないか。

 ここまで差が開いているのは、環境の違いではなく、教育方針が違う可能性もありそうな気がする。
 テストを繰り返しても、基本を徹底的に身につけさせる、“叩き込み”型教育を嫌っていることはないのか。
 対象は児童である。勉強が嫌いであっても、基礎は必ず身につけさせるべきだと思う。将来、何かしたくなった時、力が無ければ苦労するのはわかりきっているからだ。

 国語知識でも、同様に眺めてみると、こちらは算数のようなパターンにはなっていない。試験問題のせいなのか、教育上かはよくわからないが。

 一方、活用テストの結果は同じように考えることはできない。
 こちらは、満点が基本とは言えないからである。
 教育効果を見るなら、高得点側に分布がどれだけシフトしているか、満点者がどの程度存在するか、がポイントとなろう。

 見ればわかるとおり、算数活用では、沖縄は高得点側にシフトしているような状況ではない。約半分の人が50点以下ということ。
 しかも、満点は1%、1問不正解者を合わせても5%にしかならない。
 東京はそれぞれ、5%、14%である。

 国語活用はこの差をさらに目立たせる。
 沖縄は、低い点数の児童が余りに多いのである。

 受験教育のなかで育ってきた経験論でしかないが、これほど大きな差が出るのは信じ難い。
 ひょっとすると、沖縄では、“テストの点数をあげるための勉強などするな”型の指導が行われているのではないかとさえ思えてくる。

 --- 参照 ---
(1) 「衝撃 予想外の格差/学力テスト」 沖縄タイムス [2007.10.25]
(データ) 平成19年度全国学力・学習状況調査
  沖縄県−児童(公立)  http://www.nier.go.jp/homepage/kyoutsuu/tyousakekka/todoufuken_data_shou/47_okinawa/SK2147_chousa.pdf
  東京都−児童(公立)  http://www.nier.go.jp/homepage/kyoutsuu/tyousakekka/todoufuken_data_shou/13_tokyo/SK2113_chousa.pdf
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