↑ トップ頁へ |
2003.11.13 |
|
|
e新聞の可能性…ブロードバンド化が進んだにもかかわらず、電子新聞化の動きが弱い。新聞社は、各社とも、ウエブ構築しただけで満足しているようで、その先に進む気は全くないようだ。理解に苦しむ態度である。 新聞社にとっては、電子新聞は大きなチャンスである。新聞の紙/印刷代は高いから、このコストを消滅させ、配達コストをカットするだけで、大幅な収益増が見込めるからだ。 ラフに推定すると、右表のようになる。
この仮説の大前提は、購読無料化にある。そうすれば、購読者が電子新聞を今まで通り見続けてくれる「筈」と読む訳だ。そうなれば、企業も電子新聞に宣伝費用を支払い続けるだろう。 後は、印刷と配送に関する機能を一挙に無くせばよい。 これだけで、新聞社の利益は倍増する。 恣意的予測をせずとも、これだけ薔薇色の将来が約束されているのが、電子新聞事業といえる。 (もっとも、当事者にとっては、大幅な人員削減と、配送産業の消滅を意味するから、「夢」のプランと諦めているかもしれないが、・・・) といった数字を示すと、この収益モデルでは「電子新聞専用リーダー」使用料がカウントされていない、という反論があろう。確かに、現行のパソコンでは読みづらいから、普及には新型機器が必要と思われる。その費用が発生するのは間違いあるまい。 しかし、それでも、この収益モデルは変わらない。例えば、小売りで10万円程度の機器なら、月額3,000円程度で3年でペイする。現行の新聞購読料とたいして変わらずに、「電子新聞専用リーダー」を企業や家庭に導入できる。利用者にとっては、購読料金が機器の代金に変わるだけの話しである。 (安価なライセンス料で機器市場をオープン化すれば、巨大な電子機器産業が立ちあがることになる。) これだけ大きなチャンスが見えていれば、新聞社は積極的な研究開発を行うと思われるが、一部の大手新聞社以外、電子新聞への動きはほとんど無い。 かつては、新聞社は電子化では果敢な展開を行なる気力があった。版組み電子化を進め、各地に輪転機を配置し、一気に全国紙化を実現したのである。輪転機は高額な上、稼動率も低い。戦略的観点から投資を敢行したのだ。 いまや、新聞社には、こうしたかつての気概はほとんど感じられない。 過去の蓄積(情報データベース)と、全国配達網によりかかった経営を変える動きははとんど見られない。独占している「モノ」からあがる収益で生き延びるつもりなのだろう。そのため、新聞社におけるIT化は、「モノ」を効率的に活用する仕組みの強化になってしまう。新しい「知恵」で収益を生む力の強化策にはならないのだ。 これでは、電子新聞化に進む筈があるまい。 社会の成熟化とともに、健全な批判勢力である筈の新聞社も、現状維持の気風が蔓延してしまった、と言えよう。 というより、怖くてできないのかも知れない。電子新聞が登場すれば、現行の業界秩序は完全に崩壊する。 テレビ同様に、総合メディアは、今以上のナショナルブランド寡占になることは間違いあるまい。・・・地元データ報道以外に特徴を打ち出せない地方紙は、総合メディアの地方版情報と差別化ができない。読者は離れることになろう。 一方、専門紙は、購読料有料だろうが、無料だろうが、知恵と工夫次第で繁盛する道が拓けると思う。 (海外の巨大メディアの事業規模/資本力と比較すれば、日本企業の力は桁違いに小さい。マルチメディア化すれば巨大メディア飲み込まれかねないから、萎縮しているのかもしれない。e新聞化で、大規模全国紙制覇/小規模地方紙没落が発生すると予測するなら、大規模グローバルメディア制覇/小規模ナショナルメディア没落という流れが発生することになる。「恐れ」は現実を反映しているといえよう。) こうした将来像を考えると、メディア産業の構造変革が迫られていることが分かる。 メディア業界は、「コンテンツの生産業」、「コンテンツの複製業」、「複製品の配布業」への分解が要求されているのである。 収益モデルを見ればわかるように、電子化で複製コストと配布コストが大幅に削減される。従って、この部分を、公益型インフラ業に変身させるのが筋なのである。インフラ業が、「コンテンツの生産業」に広く窓口を開いてくれれば、新産業が花開くのである。そして、インフラ業も栄えるわけだ。 新聞業界は、こうした時代の流れに棹さす姿勢を続けるつもりのようだ。 歴史の教訓から見れば、このような業界は長期低迷から逃れられない。 メディア業界の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
|
(C) 1999-2004 RandDManagement.com |