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2003.11.14
 
 


印刷物離れ…

 出版不況が騒がれて久しい。
 確かに、毎年市場が縮小している。明かに、本/雑誌離れが進んでいる訳だ。
売上高対前年比
書籍 月間誌 週刊誌 (新聞業)
1997 -1.8% +0.1% +0.1% +1.1%
1998 -5.9% -2.4% -1.1% -1.8%
1999 -1.6% -3.9% -5.0% -0.6%
2000 -2.3% -2.1% -4.9% +2.2%
2001 -2.6% -3.4% -3.0% -1.3%
出版科学研究所「2002出版指標年報」

 この理由ははっきりしていない。
 といっても、出版業界人によれば、若者を中心とした文字離れと、財布の紐が絞られたことが原因らしい。

 確かにその通りかもしれないが、このような狭い視野の議論は避けた方がよい。

 先ずは大きなトレンドをつかむことが重要である。・・・我々の生活は益々メディアに依存するようになっているのではあるまいか。
 そのなかでの、出版物離れ現象として考えれることが重要なのである。こう考えれば、対処策も案出できるからだ。
 情報/文化活動は出版物だけではなく、電子機器も関係しているから、こうした広範な視点で現象を見ないと、チャンスを失ってしまう。

 この現象の本質は 高い視点から眺めれば、すぐに見えてくる。

 例えば、
 漫画雑誌とアニメゲームのどちらが楽しいか。
 手紙を書くのと、ケータイのメールのどちらが使い易いのか。
 新聞の夕刊ニュースと、テレビ報道/インターネットニュースではどちらの価値が高いのか。
 1年前の状況がわかり易くまとめてある書籍と、今直面している課題についての専門家の意見交換ウエブのどちらに魅力を感じるか。・・・

 このような例はいくらでもある。従って、出版物の意義を凌駕する新しいメディアが登場しているから、出版物のシェアが落ちていると見なさざるを得まい。
 この状況下で、文字離れ防止と称し、読書運動を活発化させても効果はない。

 ここで間違えていけないのは、「ヒット書籍は生まれている」点である。人々が読書を避けている訳ではない。読む以上に意味あるメディアが登場しただけなのだ。本当に必要なもの以外、読まなくなったにすぎない。
 この現実感覚を喪失すると、出版不況はさらに深まることになろう。

 出版業界は、「文字離れ」などと語る前に、現実を直視すべきだ。
 新聞など購読しなくても、ほとんどこまらない時代である。ところが、新聞は売上維持に成功している。文字を避けている訳ではないのは、これだけでもはっきりしている。
 インターネットサーフィンによる情報も今の所ほとんどが文字情報である。ケータイなど、実質的には文字メールの道具と化している。文字離れというより、日々接している文字量は増えている可能性さえある。
 この現実を見ようとしないのは、自分の業界だけが文字文化と規定する、偏狭な思想があるからとしか思えない。

 旧態依然たる出版物しか提供しなければ、新しいメディアに顧客を奪われるのは当然である。
 パソコンとゲームが流行ったら、それを脅威でなく、チャンスと考え、挑戦する気概が必要なのである。実際、パソコン雑誌は盛況となったし、ゲーム攻略本も売れに売れた。
 盛り場には、飲食店、アルバイト、イベント、等々の無料情報誌が至るところに置かれている。購読料などあてにしなければ大繁盛だ。
 要は、時代の波を作っていけるかが問われているのである。

 残念ながら、この業界は下流も含め、伝統を重んじる体質がある。再販制度のような規制を喜ぶ人ばかりである。
 本屋は、何時までも自分の業界に留まり続けている。お蔭で、本の小売りに進出した異業種に市場を奪われ続けている。
 取次業に至っては、返本制度を通じて、出版社と本屋への貸金業に特化してしまった。与信先が経営不安定化し始めたのだから、新しいビジネスモデルに移らないと、顧客の不調の波をそのままかぶる。しかし、変化の動きは見えない。

 このままなら電子出版は異業種が制すかもしれない。


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