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2004.1.9
 
 


時代遅れの日韓大衆文化交流…

 2004年1月1日から、韓国で、日本の大衆文化が全面開放されるとの報道が踊ったが、結局のところ、掛け声だけだった。在日韓国人スターが日本で活躍し始めたから、解禁を一歩進めることにしたのだろう。
  ・劇場用アニメの禁止続行 (2006年解禁、国際映画祭の受賞作品などは除外)
  ・娯楽番組の放送禁止続行 (衛星+地上波)
  ・ドラマ番組放送禁止続行 (地上波、日韓共同製作品は除外)
  ・歌謡番組放送禁止続行 (地上波、公演/出演作品は除外)
    (http://www.asahi.com/culture/update/1230/005.html)

 言うまでもないが、日本語使用の是非や、日本の大衆文化を開放するか否かは、韓国の自由である。

 しかし、この問題に対する姿勢で、韓国政権の本質が露呈したと言えそうだ。

 もちろん、規制の名目は、植民地支配の歴史から生じる国民的反感への対応や、自国文化の保護だが、実態は、国産映画の放送枠を政府が確保するといった、軍事独裁国型政策そのものである。
 もっともらしい理由はついていても、権力がメディアを規制する仕組みを温存させただけの話しである。

 日本の大衆文化が嫌われているなら、視聴する人はいないし、自国の民度に比して低俗な番組をわざわざ流す放送局もあるまい。日系資本の放送局が並んでいるなら別だが、番組選択に、権力が登場する必要などないのである。
 にもかかわらす、権力の規制が続く。しかも、マスコミも、規制を後押しし続けている。

 日本を知りたいと考える人が多くても、マスコミが率先して情報遮断に動くのだから驚きだ。
 韓国マスコミの思想基盤は民主主義ではないことを宣言しているようなものである。
 [日本から学ぶもの無し、との主張が溢れたため、徐賢燮 (Soe Hyun-Seop)氏が「日本はある」を著述し、ベストセラー化したのが1994年だ。これを見ても、日本の実像を知りたい人が多いのは間違いあるまい。]

 そもそも、日本の大衆文化自体が大変貌しつつあるのに、今時、禁輸で何を得ようと考えているのだろう。外交カードに使いたいのだろうか。
 自国の大衆文化産業振興を狙うなら、日韓間の投資活動を促進させた方が効果があがる筈だ。

 例えば、日本が進んでいると考えるのなら、韓国向け作品製作のために日本に投資すべきである。利益があがることがわかれば、日本企業も「韓国文化を十分考えた韓国向け商品」を作る筈だ。これこそ、韓国文化の日本移植だ。
 なかには、コストを考え、日/韓共用型の作品を狙う企業も登場しよう。文化の融合だ。
 すでに韓国ドラマの魅力は知られているから、その動きを見て、韓国作品で日本市場を狙おうと考える起業家も現れよう。韓国商品が、日本市場を席巻するかもしれないのである。
 [もともと弱体な産業なら、政府が保護しても、没落までの時間が延びるに過ぎない。全く無駄な努力である。競争力があれば、保護で成功したように見えるが、実は、保護せずに、競争政策を展開していれば、さらに飛躍できた可能性の方が高い。]

 禁輸政策を続ければ、日本で韓国文化を考慮に入れた作品を作る人はいなくなる。おそらく、韓国にとって不愉快な作品の密輸出が続くことになろう。

 一方、この動きに対する日本の反応は、教科書的だ。大衆文化が開放されれば、日本への理解が深まるとのコメントばかりだ。
 商品交易で、文化の相互理解ができる筈があるまい。どうして、過大評価するのだろうか。
 このような態度を続ける限り、いつまでも「官製」文化交流のレベルを越えられまい。
 映画/放送番組の共同製作はその典型である。両者が一緒に活動すればプラスになるとの思い込みがあるようだが、両者共通のテーマ無しに進めればかえってマイナスかもしれない。大衆の心を捉えるのは、日本製とか韓国製の問題ではなく、テーマである。

 このような状況が変わらない限り、相互理解が深まることはあるまい。

 そうなると、理解を深めるには、これ以外の分野に期待するしかなさそうである。

 と思っていたら、2003年末に、期待に応えそうな動きがあった。
 韓国日語日文学会の日本語専門家達が書き下ろした、日本文化解説本シリーズが出版されたのである。

 インターネット書店の書籍紹介を見ると次ぎのようなものらしい。
 1巻目は、下駄の話しから始まる。下駄に左右がある、と聞くと韓国では驚くらしい。このような、わかりづらい日本の伝統や風習が解説されている。
 2巻目では、現在の日本の流行を紹介している。日本の国技、相撲が代表的題材だが、プロ野球の実像や、千と千尋の神隠しがヒットした背景も伝えている。
 3、4、5、6巻目は、著者達の本職分野でのレビュー集だ。俳句、小説、敬語、言語表現を文化論の視点で取り上げている。
    (http://kr.shopping.yahoo.com/books/038/003/003/1908457.html /1908472.html, /1908501.html, /1908508.html, /1908510.html, /1908529.html)

 残念ながら、韓国語なので、読破できそうにないが、日本人から見ても魅力的な内容である。
 韓国では、メディア産業はナショナリズムを煽るのに対し、専門家は地道な活動に徹しているようだ。


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