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2004.11.24
 
 


電子書籍化は進むだろうか…

 電子書籍ビジネスコンソーシアムの第2期が始まり(1)、シグマブックのコンテンツサイトも充実してきた。(2)

 一方、対抗馬のBBeB Book フォーマット、Timebook のサイトも拡充が急だ。(3)

 電子書籍機器の競争が激化してきた。
 本来なら、こうした競争で切磋琢磨が始まり、市場が活性化され、市場が急成長する筈である。

 しかし、獲得会員数を誇るような報道はさっぱり目にしない。ということは、思ったほど顧客が集まっていない、ということだろう。
 (もっとも、インプレス インターネット生活研究所によれば、電子書籍は約4万点が刊行され、2004年3月現在で、国内市場規模は約18億円で、伸張が予想されるそうだ。(4))
 市場を作る、折角のチャンスだが、今のままだと萎んでしまうのではないだろうか。

 これを避けるには、先端ユーザー仮説を立てて、一気に展開すべきだと思う。

 この市場は、徹底した市場調査をすれば、展開方法が見えてくる、というものではないと思う。

 電子書籍の文化を作り上げる必要があるからだ。ゼロから新たな文化を生み出すのだから、調査結果はたいして役に立たないのである。
 換言すれば、マーケティングスキルを発揮する以前に、文化の土台たる「思想」そのものを確立すべきなのである。

 要するに、新しい読書スタイル提案が必要なのである。

 ・・・こんなことを考えてしまったのは、電子書籍サイトの宣伝に違和感を覚えたからである。

 気になるのは、「無料BOOK」とか「1冊210円と、とってもお得!」という言葉である。
 新商品としては、当たり前の販売促進策とも言えるが、電子書籍の場合は、奏功するとは限らない。もしかすると、逆効果かもしれない。

 と言うのは、他のメディア販売と同質な商品という印象を与えてしまうからである。

 つまり、映像ソフトは携帯DVDプレーヤー、音楽ソフトはCD/MD/HD携帯プレーヤー、ゲームソフトは携帯ゲーム機器、であり、これに、書籍ソフトは携帯書籍読み取り機器が加わる、となる。

 もし、このようなコンセプトなら、電子書籍市場は小さなままで終わりかねない。

 他のソフトとは違って、もともと、本には携帯性がある。携帯機器を抱えるより、文庫本を尻ポケットに突っ込むスタイルでも十分なのである。他の携帯機器とは性格が違うのである
 一般消費者は、使い勝手が良く、厚い辞書の替わりに、便利な専用電子辞書は欲しくなるが、高額な汎用読み取り機器に魅力を覚えるとは思えないのである。

 要するに、電子書籍を使うことがお洒落で、楽しい習慣と思わない限り、他の携帯機器と同様の地位を占めることは難しいのである。
 新しい読書文化を生み出すことが求められているのだ。

 そもそも、日本は再販制度が敷かれてきたから、安いから本を買う習慣自体がない。値段とは、ハードカバー、軽装、文庫という新品と、古本という形態の違いで決まる。このような常識が通用している世界に、「1冊210円と、とってもお得!」と語れば、新形態の安価本が追加された以上のインパクトは無かろう。

 ・・・などと語ると、携帯機器の開発だけでも、大変な労力がかかっているから、おそらく、当事者の方々はご立腹だろう。

 しかし、せっかくの努力が今のままでは報われないのではないかと思う。

 すでに機器の表示能力からいえば本並みになった。ページめくりなど、一寸した問題はあるが、読むこと自体には、なんの支障もない。素晴らしい技術といえよう。

 ところが、この機器の訴求点の方は、今一歩である。
  「たくさんの本が、小さな一冊に。」
  「手軽に持ち歩ける。読める。」
  「欲しい本といつでも。新しい本をたくさん。」
 なのだ。(5)
 メリットは確かにその通りであるが、これで買う気がそそらえるかと訊かれると、う〜ん、と唸らずをえない。

 販促物も凄い。
  ・コンテンツ「日本文学全集100」
  ・ニュースサイトの最新ニュースを簡単に取り込めるソフト
  ・Word、Excel、パワーポイント、PDFを読めるソフト

 しかし、文学全集以外は、ビジネスユーザーの要求に応えるものではないだろうか。それなら、PDAや小型パソコンの方が便利ではないかと思う。
 本にしても、これが無料でついてくること自体は大サービスであることは間違いないが、文学全集を読もうと考える人がどれだけ存在するか、疑問である。

 この調子では、電子書籍化はなかなか進まないのではないだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.ebookjapan.org/ (2) https://www.sigmabook.jp/SigmaBook/Entrance.do
(3) http://www.timebooktown.jp/Service/index.asp
(4) http://internet.impress.co.jp/iil/ebook2004/index.htm
(5) http://www.sony.jp/products/Consumer/LIBRIE/


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