↑ トップ頁へ

2006.3.1
 
 


霧散するBSデジタルラジオを見て…

 2006年3月、BSデジタルラジオがついに、霧散するようだ。
 総務省の放送普及基本計画によれば1番組だけは残るらしい。(1)

 宣伝華やかし頃は、20を超えていたのではなかったと思うが、あっという間である。もっとも、原則などないようだから、力関係が変われば、復活したりするのかも知れないが。

 放送終了理由が放送で流れているが、なかなか含蓄ある表現である。

 「今後BSデジタル放送はハイビジョンテレビを中心に普及を図っていくこととなり、ラジオ放送局である○○○放送といたしましては○○年○月○日をもって終了することといたしました。」

 ラジオに関心が無い方が多いだろうから、放送局がどのようなことをするつもりだったか、一例を示しておこう。(2)

 3チャンネル放送を行うという。
 1つ目は、双方向性、映像、データ通信などBSデジタル放送が持つ機能を最大限に活かしたオリジナルプログラム。
 2つ目は、既存のアナログ放送と同じプログラムの同時放送。聴取可能地域が全国となり、しかもCD音質。
 3つ目は、過去に放送した名番組と時差放送。

 一見すると、オリジナル番組に重点がありそうに思ってしまうが、そんなことができる訳がない。対応するラジオ機器が登場しないのだから、広告収入など全く期待できない。経営的に、無理筋なのである。
 従って、既存の番組を流すしかない。それでも、いつまで持つかというところである。
 しかし、それにしても、既存の番組を流すことに、何の意味があるのか聞いてみたいものである。聴きたい人がいるなら、地上波アナログ放送で対応すれば十分である。とんでもないお金をかけたインフラを使って呆れるような企画を平然と行うのだから驚きである。
 といって、大量の音楽を流したところで、珍しくもない。二番煎じ音楽番組など、価値ゼロである。

 どだい、ラジオチューナを持つ人が、テレビでラジオを聴くというコンセプトがAV機器業界の常識に反している。
 その昔、テレビとラジオを一体化した製品があったが、すぐ消滅した。そんなニーズは無いというのが、定説である。しかし、BSデジタルなら、音質が良いから、テレビでラジオを聴くようになるとでも言うのだろう。
 早い話、自動車でも聴ける地上波デジタルラジオ放送の技術的な予行演習以上ではない。

 そんなことはわかっているのだから、貧弱なデータ放送に枠を与えるとか、本当に全国に放送を流したい事業者に対して、放送枠競売でもすればよさそうなものだが、そうはならない。新規参入を防ぐために、わざわざ無理筋の企画を作ったとしか思えない。

 このような状況を続ければ、産業全体が衰退するとは考えないのだろうか。

 --- 参照 ---
(1) http://www.soumu.go.jp/s-news/2005/050713_2.html
(2) http://www.1242.com/banshin/2000/236.html
 

 メディア業界の目次へ>>>     トップ頁へ>>>
 
    (C) 1999-2006 RandDManagement.com