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2007.3.8
 
 


非マスコミの力…

 2007年3月3日、イランのMahmoud Ahmadinejad 大統領と、サウジアラビアのAbdullah 国王がリヤドで会談を行なった。
 空港まで、国王が出迎えるシーンの写真が配信された。最高権力者ではない政治家を迎える姿勢としては異例の扱いだ。
 イラン戦争を避けようとの動きがようやく始まったようだ。(1)

 さて、それでは、日本のマスコミはどんな報道姿勢か見てみようと、Google ニュースで“イラン”を眺めてみた。一番上位は「スケープゴート・イラン空爆の可能性」(2)[萬晩報]
 主要なマスコミ以外の報道も取り上げる仕組みになっているとは知らなかった。
   ちなみに、関連記事は48 件. 以下のような記事.
   「イラン・サウジが域内緊張緩和へ協力、米圧力けん制で」 [読売新聞]
   「対イスラエルで軟化 イラン大統領がサウジ国王に表明」 [朝日新聞]
   「宗派抗争の拡散阻止で一致・イラン大統領とサウジ国王」 [日本経済新聞]

 このニュース、ワシントン在住 中野有 氏の2007年3月5日付の論評。
 “ニューヨークタイムズ、2月26日の読者投稿欄のイラン国連代表部の広報担当官の意見が目に留まった。”というもの。
 “ワシントンのシンクタンクの議論から、イランへの攻撃を回避する勢力はどこに存在しているかと考えさせられる。”との主旨。
 その通りだ。

 米国、イスラエル、イランの、どの国も、戦争に踏み込めばえらいことになるのは自明。しかし、いつでも戦争に踏み切れる準備を着々と進めているのが実態。
 戦争に向かっているとの報道が増えて当たり前だろう。しかも、いずれの国にも、戦争期待勢力が存在するのだから。

・米国、イスラエルは、イランの核の動きは容認できない。国内世論は、イラン許すまじ調だ。
・イランでは、強硬姿勢の現政権の人気は急落中。経済不調だからだろう。しかし、言論統制で抑え込む政治ではないから、大国ペルシアとしてのアイデンティティを求める流れには逆らえまい。欧米の主張に妥協で応えるのは極めて難しい。

 直接戦乱に係わらない国も、自国の利益を考えると、戦乱阻止に動くとは思えない。

・ロシアにとっては、イランでの緊張は、エネルギー価格高騰での収益増を意味する。中東が安定してしまうと、天然ガスの国際カルテルの道も閉ざされかねないし、原油価格が50ドル以下になり、経済繁栄も終わりを告げるかも知れない。
・中国は、中東問題でゴタゴタが続くうちに、アジ/アフリカ地域での影響力を強化して、資源確保を図りたかろう。
・日本は、イランの原油依存度が大きいから、本来なら戦争回避に動くべき立場にあるが、日米軍事同盟維持が最優先課題なので、だんまりをきめこむ。
・アラブ民族国家は、イランの大国化を抑えたい。しかも、フセイン処刑が、イランと繋がっていると言われるシーア派イラク政権による報復であることが広く知られてしまった。それだけではない。ヒズボラやハマスがイランの支援を受けている。サウジアラビアにとって、イランの脅威は現実問題なのである。

 ・・・こんな状況を踏まえて議論ができる場が増えればよいのだが。

 政治に絡む話は、検索をかけると、文字通り五万とかかってくる。しかし、ほとんどは中傷誹謗を書き連ねた文章で埋まっている。専制国家並みの、議論許さず型をお好みの人がいかに多いかよくわかる。
 もっとも、表だった意見表明を避け、ともかく上手く立ち回るだけの人達も多いから、それよりはましとの話もあるが。

 ちなみに、アラブでの政治・文化なら、2003年から始まった「The Arabist」(3)が面白い。ジャーナリストのブログだが、結構読まれているらしい。
 確かに、目を通しているだけでも、おぼろげながら、中東の状況がわかってくる。
 と言っても、中東では、下手な発言をすれば、投獄の可能性があるから、そんなものとして読む必要があるが。
 ここでのポイントは一つ。
 湾岸諸国、エジプト、ヨルダン、というスンニ派専制国家で、政権維持が難しくなっているということ。これが中東問題の底流であり、イラン問題でもある。国内の反政府シーア派勢力を支援しかねないイラン政権は、専制国にとっては打倒対象でしかない。
 言うまでもないが、これらの国々は欧米にとっては虎の子。どうなるかは自明である。

 こんな話をすると、質が高い小さなメディアが活躍していうように聞こえるかもしれぬが、期待しない方がよい。
 中野有 氏のような人がそこらじゅうにいる訳がないからだ。

 例えば、ロシアで、なにがおこっているか、見るとよい。ここではメディアが権力に握られているため、LiveJournaブログ“ZheZhe”が報道機関を兼ねている。そのお蔭で、極右勢力の影響力が強まっているのだ。(4)
 ブログが流行るということは、質の悪いメディアが増えることでもある。

 --- 参照 ---
(1) Scott Peterson: “Saudi Arabia, Iran target Mideast's sectarian discord” Christian Science Monitor [2007.3.5]
  http://www.csmonitor.com/2007/0305/p07s02-wome.html
(2) http://www.yorozubp.com/0703/070305.htm
(3) http://www.arabist.net/
(4) Anna G. Arutunyan: “All power to the Russian bloggers”International Herald Tribune [2007.2.27]
  http://www.iht.com/articles/2007/02/27/opinion/edartun.php
  (Anna G. Arutunyan はフリーランス, distributor はAgence Global.)


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