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2009.6.30 |
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新聞のイラン報道を眺めて思ったこと…テヘラン騒乱の報道で、圧倒的な力を発揮したのは、非ジャーナリストの映像リポートだった。これにまともに対応できたのは、CNN位ではないか。“iReports on CNN”(1)がまさにドンピシャだったのである。流石。 ただ。CNNが優れていたのは、素人報道のサイトを別途用意したことではない。プロの編集者が、素人のレポートからピックアップして、CNNの本報道に使った点。本物を見極める力があるとのプロフェッショナルとしての自負を感じさせるやり方だと感じた。 (こんな議論が通じるのは、民主的仕組みが機能している国家のみ。このような報道が独裁国の状況を揺るがすと見る人がいるが、多分、逆である。早晩、フレーム・アップ報道とみなされ、反権力勢力の弾圧が行われ、独裁体制は強化される。) この流れを見ていると、一般外信記事はCNNとAPで十分なのではという気になってくる。(CNNでなく、BBCと考える人もいるかも。) CNNは、世界中に生の現地情報を提供できるネットワークを持つ上に、各地の市民のレポートも活用できる能力がある。質の方はよくわからぬが、細々と特派員を送る程度しかできないメディアが、CNNと競争できるとは思えない。 一方、APは自らの目と足で深層に迫るプロフェッショナルの集団を抱えている。危険な場所でもあえて記者が潜入を図ったりするなど、圧倒的な力量。 もちろん、このような一般報道ではもの足りないと考える人もいるだろう。そんな人は、深読み可能なメディアに頼ることになる。こちらは、ビジネスに直結するから、繁盛するに違いない。 だが、中途半端な一般報道体制を敷くメディアは切り捨てられて行くのでは。 そう考えたのは、日本の新聞(ウエブ)のイラン情勢報道を眺めていて、その浅薄な内容にがっかりしたからである。 これを機会に、○○支局を全廃し、力量ある駐在員にはフリージャーナリストになってもらった方がよいのではと思うほど。 どうも、日本のメディアは、世界の主要拠点に派遣「記者」がいるだけで、素晴らしい情報が提供できると誤解しているのではないか。 この説が成り立つのは、記者の質が高い場合に限ることを忘れているのかも。もし、現地の新聞を読む程度しかできない記者なら、日本で徹底的に電子版を読む素人が方がまともな記事を書ける時代に入ったのだが。インターネット時代は、基本情報なら誰でもすぐに取れる。プロとしての力量が期待されているのである。 情報統制の冷戦時代の感覚から抜けられないのにはこまったもの。 そんな感覚だから、日本版「オーマイニュース」に力を入れるジャーナリストがいたりするのではと思ってしまう。コレ、表面的には、インターネット時代に合わせた取り組みだ。だが、プロのジャーナリストが、「市民みんなが記者だ」(2)と語り続けるのには驚いた。 素人の方が、素晴らしい情報が得られるし、その視点も鋭いと言いかねない雰囲気。そんなことが有り得るものかネ。 そもそも、プロのジャーナリストなら、韓国で成功した「オーマイニュース」のパターンを日本へ持ち込もうとは思うまい。 韓国の大統領選挙活動を見ればわかるように、実質的な北朝鮮シンパと左派の攻撃的な労働組合への支持層はかなりの厚みがある。ところが、韓国の主要メディアはそれには対応していない。(親北朝鮮の盧武鉉前大統領が、大手新聞社と対立したのは、当然の結果である。)従って、既存メディアと異なる姿勢のメディアの存在余地があった訳である。これが、韓国の「オーマイニュース」の本質と見るべきだろう。ただ、こんなことを日本で語るとゴタゴタにまきこまれかねないから、言わない人が多いだけ。 日本の状況は全く違うことなど、説明の要もなかろう。政治姿勢が180度違う新聞が批判合戦をしているのだから。そこへ、さらに「市民派」メディアを加えてどうしようというのか。 だいたい、素人を集めて、プロより質が高いものを作ろうとの発想が理解不能。日本の、プロのレベルはとてつもなく低いと考えているなら別だが。(まあ、プロと称する記者の質問が、素人以下のことが多いから、その可能性も否定できない面はあるが。) こんな発想のジャーナリストが多いから、新聞の評価が落ちていくのではないのか。イラン報道を見ていると、この先、悪化一途ではないかと思えてくる。インターネット時代とは、本当のプロが活躍し易くなる筈だと思うが、どういう訳か日本では逆に動いているように見える。 以下の設問に対する最多回答が、「どちらともいえない」という状況にまで来たことを直視すべきだと思う。(3)(39.7/42.1/48.8/50.9%) 「新聞には社会を導いていく力がある」 「新聞は国民の声を社会に反映するのに役立っている」 「新聞は、社会のさまざまな意見を分け隔てなく取上げている」 「新聞は政権に対して適切な評価を下しながら報道している」 この状態では、“「新聞を読むことが生活の一部になっているか」という設問に対し、十八〜十九歳では70.5%、二十代で56.4%が否定回答”という結果がでて当然だろう。 要するに、日本の一般紙の政治・経済記事は期待されなくなりつつあるということ。 もっとも、この調査結果を見る限りでは、新聞購読が急激に減ることはなさそうである。 期待されているのは、そんな記事ではないからだ。おそらく、スポーツと三面記事が充実していれば、十分満足してくれる。と言っても、それはオマケにすぎない。 お金を払う一番の理由は、どう見ても、テレビ番組表を毎日宅配してくれる点だ。 【追記 1】 イランでの騒乱を、あくまでも選挙不正問題として扱い、大統領候補者と現政権/最高権力者間の姿勢と、大衆の動きを伝えるのが一般報道。この手の記事は間違いも少なくないが、ことの本質に繋がる貴重な情報が含まれていることがある。プロフェッショナルの直感的判断による、情報の取捨選択能力が重要ということ。 一方、高級メディアは、様々な情報を俯瞰して、読者が本質を読み取り易くするように工夫している。プロフェッショナルの視点からの情勢判断を提供することが特徴だが、ベタ記事でも、大きな流れを示唆するような情報が隠されていることが多い。 日本の新聞は一般報道かつ高級メディアを目指しているそうだが、イラン報道はどうだったか眺めてみると、その実力のほどがよくわかる。 尚、選挙の実態を云々するような解説記事とは、いくら内容が濃くても一般報道にすぎない。イランは宗教独裁国家。そんな国で大規模な騒乱が発生したら、宗教指導者間での権力闘争発生を疑うのが常識である。 【追記2】中国報道に関しては、日本の新聞の力量もなかなかのもの。 北朝鮮の金総書記の後継者が中国訪問とのスクープ(4)は、正誤を別にして、“なるほど”感あり。たとえ乗せられた誤報であっても、この報道の価値は極めて高い。 当然のことながら、胡錦濤政権外務省の報道官発言(5)に続いて、外務次官まで、わざわざ否定を表明。(6)実に意味深。 FTは遅れて、この訪問を報道。(7) “ほほ〜。”人民解放軍の体質からすれば、そんなところか。 --- 参照 --- (1) http://www.cnn.com/ireport/ (2) 「市民記者」のオーマイニュース 2年半で撤退、4月下旬サイト閉鎖 [2009/3/25] http://www.j-cast.com/2009/03/25038230.html (3) 前田耕一: “新聞への不満多く守勢に 第1回「メディアに関する全国世論調査」” メディア展望 [2009年4/5月] http://www.chosakai.gr.jp/news/pdf/2104.pdf (4) 峯村健司(北京): 「金正雲氏が極秘訪中 金総書記の特使、胡主席らと会談」 朝日新聞 [2009年6月16日] http://www.asahi.com/special/08001/TKY200906150339.html (5) 中華人民共和国外交部Spokesperson Qin Gang's Regular Press Conference [2009/06/19] http://www.fmprc.gov.cn/eng/xwfw/s2510/t568455.htm (6) 中国外務次官「金正雲氏1回も来ていない」 日本テレビ [2009年6/26] http://www.ntv.co.jp/news/138445.html (7) Jamil Anderlini(北京): “North Korean ‘bright leader’ visits China” FinacialTimes [June 28 2009] http://www.ft.com/cms/s/0/1f2db63c-640e-11de-a818-00144feabdc0.html (CNNの写真) [Wikipedia] (C) Dantadd http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cnncenter.jpg メディア業界の目次へ>>> トップ頁へ>>> |
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