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2009.12.14
 
 


電子書籍普及は業界大転換の引き金かも…

PDF版電子書籍市場が米国で開花したようだ。
 Kindleによる電子書籍販売が快調らしい。日本では、それほどでないと言う人も少なくないが、すでに、Amazonの本の売上げ冊数では、32%を占めるまでになっている。(1)それに、韓国の機器メーカーがこぞって端末を作り始めたりしているから、Kindle以外の市場も急成長していそうだ。
 物理的な配送処理のインフラ維持コストがかからないビジネスだから、ここまで売れるとネット販売事業としてみれば、利益的に相当貢献していそうである。
 なにせ、製本や物流が不要であり、著者支払いは35%。著者の収入から考えれば、廉価大量販売が可能ということだから、ベストセラーがここに集中することになるのかも。

 すでにタイトルは35万を抱え、毎週数千が増加中というから、この流れは止まりそうにない。
 広い国土で、都市部でなければ、本屋に買いに行くのは面倒。もともと、本をインターネット注文して送ってもらうのが普通の社会。しかし、配送サービスは日本の質は期待できないから、一度ディスプレーで読むのに慣れれば後戻りすることはないのではないか。それに、日本のような“積ん読”体質は無さそうだし。
 このチャンスを逃すまいと、競争相手も、電子書籍ビジネスに力を入れるから、2009年末は爆発的に市場が伸びる可能性もあろう。

 これが実現すると、紙媒体と電子媒体の地位が逆転することになろう。ネット販売で、結構な読者数が生まれる見込みがついた時にだけ、装丁にも力を入れた、紙ベースの書籍が発刊されることになるということ。
 そして、ダイジェスト電子本も生まれるのだろう。電子書籍化でかえって、オンデマンド型印刷の完全本ビジネスも立ち上がる可能性がでてきそうだ。

 こんなことを考えていると、米国から読書文化が変わるのだな〜、で終わってしまいかねない。
 ぼんやりと眺めていると、流れに取り残されるので注意した方がよい。電子書籍普及が産業構造の変革を引き起こす可能性があるからだ。

電子書籍用の端末の意味が変わるかも。
 現在の市場の雄は、言うまでもなくKindle。頁送りが多少遅いのと、モノクロだが、見易いし、無線で即時本が購入できるというのがウケたとされている。
 9インチでPDFファイルも読めるタイプが出たことも普及に弾みをつけたようだ。学生にとっては、教科書を読むのに適した大きさだから、紙ベースの本の価格を考えれば相当倹約になるということらしい。
 ちなみに、Kindle 2はインターナショナル版で展開することになっているが、こちらはどうかな。(2)

 まあ、Kindle対抗で、様々な端末が登場し、サービスも色々と生まれるのだろうが、そんな競争だけを見ていると流れを見誤るのでは。
 電子書籍の普及で、見落としてはならないのが、購入は固定網に繋がったパソコン経由ではなく、無線網を使ったものであることを忘れるべきでない。
 要するに、製品コンセプトとしては、内容を有料で更新できる電子辞書に近い。ただ、そのフォーマットがPDFというだけのこと。
 ともかく、購入したデータは端末保存。
 これ、いかにも一時代前のやり方でしかないが、どこでも無線網に繋がるやり方としては、これが一番実践的なのである。

 それでは、新時代とはどういうものか。
 言うまでもないが、個人所有のデータはすべてサーバー側に置き、端末はそのデータを読み出すだけの仕組み。
 しかし、それは理想論でたいしたことはできなかった。せいぜいが、USB接続のデータカードで無線インターネット網に繋げるというもの。ビジネスマンにとっては必要だから使うが、マニア以外は滅多に使うものではなかろう。

 しかし、Kindleが携帯電話通信業者のインターネット網を使っているのだから、これを常時接続型にできない訳ではない。インフラ網の容量とコストだけの問題。
 そんな端末が登場してもおかしくないのである。

 現行の電子書籍ビジネスは、配信から端末までの、独占的な仕組みだ。もともとそんなピラミッド構造を壊せることがインターネットの意味だが、Kindle型はこの考えとは全く逆。そんあ仕組みが長続きすることはなかろう。
 と言うか、市場を拓くための過渡期には、どうしても必要なものというにすぎまい。

ようやく、本格的に電子書籍を持ち歩ける環境が揃い始めた。
 こんなことを語るのは、ようやく通信インフラが整い始めたからである。
 例えば、軽くて読み易い端末にして、書籍のデータをサーバー側に置くという電子書籍の仕組みが実用的に作れるようになってきたということ。
 その姿をいみじくも示したのが、日本でのイー・モバイルの“Pocket WiFi”。4時間しか電池は持たないが、80gと軽量小型でポケットに入れて持ち歩ける。まずますの費用で、WiFi接続の端末を常時インターネットに接続できることになる。

 宣伝を眺めると、“PSP”と“DS”をネット接続で持ち歩けることが一番のウリで、次がカメラの巨大データのアップロード。つけたしがパソコン接続。
 それはそうだろうが、一番の衝撃は“iPodtouch”のような機器との接続である。ごちゃごちゃ機能満載の日本のケータイは、携帯電話に戻されておかしくない。通信インフラを取り仕切るサービス業者の考え方に、端末業者が縛られる必要はなくなるということ。
 これをケータイが変わるという話と考えてはこまる。

 どういうことかと言えば、パソコンでいえば、インテルのCPUと、ウインドウズOSに支配されていた世界が瓦解するということ。
 Pocket CpmputerはCPUが携帯電話と同じようにARMでもかまわない。OSはグーグル製の無料品でも一向にかまわない。ただ、ネットに接続できなければただの箱という機器である。サーバー側の提供内容に合わせ、使い易い端末を作ればよくなるだけのこと。こうなれば、CPUやOSが、HDやRAMと同じような地位に追い込まれること必定。
 早く言えば、冗談ではなく、本当に100ドルパソコン時代が始まることになる。機能満載にもかかわらず、一部しか活用しないような汎用「パソコン」は現在の高級オーディオのような状況に落ち込むと思われる。

日本のネット接続状況を変えることができるか。
 そんな目で、電子書籍ビジネスを眺めると、競争の目は実はKindleではないことがわかるのではないか。
 これから注目すべきは2点。
 先ず、端末。
 安価で、見易く、使い易く、WiFi接続になっているかだ。
 次が、サーバー側。本をサーバー側で保管するサービスになっているかである。
 日本では、どちらも、ほとんど動きがないと言ってよいのでは。

 日本ではネット接続端末と言えば、なんといってもケータイだが、通信サービス業者の仕組みで固められており新しいことは難しかろう。それに、小画面で本を読ませようという努力に意味があるのか、はなはだ疑問だ。(ケータイ開発力がWiFi端末開発に向かえばよいが、ケータイビジネスを続けたい企業ばかりだから、そうはなるまい。)
 ゲーム機器はネット対戦の仕組みができているから、一見、芽がありそうに見えるが、基本はダウンロードとメディア販売のビジネス。脱皮は難しそうだ。
 カメラ類は、ネット接続を主流にしてしまえば、サーバーから撮影した画像を見る機器が登場することになるから、やり方によっては、一大潮流をつくれるチャンスだが、その動きは弱い。残念なことだ。
 結局のところ、WiFi接続機器の主流はモバイルのWindowsパソコンか。利用シーンと言えば、家庭内か新幹線やコーヒーショップのホットスポットだけで、この程度ではたいした意味はない。
 本当に常時ネット接続のパソコンが必要な人は、イー・モバイルのカードを使っているのが実情だろう。(小生の場合、未だに古ぼけたPHS電話機も持ち歩くが、スピードは遅くても、通信可能地域の関係上不可欠なだから。それぞれの事情で選択は色々あろう。)
 どこを眺めても、WiFiの本格活用の領域に踏み入れていないと言ってよいのではないか。

次の時代の鍵を握るサービスはすでに登場している。
 こんな目で電子書籍産業を見ると将来が見えてくるのではないか。
 この場合、注意すべきは、書類の意味が変わりつつあるという点。
 その典型が、なんでも“Scribd”(3)の世界である。(4)
 見方によっては単なる文書共有サイトとされてしまうが、すでに有料文書が登場しており、利用が進みつつある。Harvard Pressももちろん参加しており、(5)電子化の波はすでに当たり前となっていると見てよいのでは。
 そして、 注目すべきは、iPaper Flashフォーマット。PDFだろうが、doc.だろうがなんでもござれで、実に優れた方法。ソフトはここまできたかと驚かされる。
 要するに、このサイトに接続することイコール読書となる可能性を秘めている訳だ。パソコンだろうが、どんな端末だろうが一向に構わないということ。

 --- 参照 ---
(1) DEBORAH SOLOMON : “Questions for Jeffrey P. Bezos Book Learning” NYT [December 2, 2009]
  http://www.nytimes.com/2009/12/06/magazine/06fob-q4-t.html
(2) “International release of Kindle 2!” blog kindle [October 6th, 2009]
  http://blogkindle.com/2009/10/international-release-of-kindle-2/
(3) “日本人向けscribdの使い方”
  http://www.scribd.com/doc/4017451/3scribds-tutorial-for-Japanesescribd
(4) Kim Hart: “Opening up government data with Adobe, Google, Scribd” The Hill [11/12/09]
  http://thehill.com/blogs//hillicon-valley/605-technology/67185-adobe-draft
(5) http://www.scribd.com/harvard_press


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