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2010.7.5
 
 


日本でのネットメディアの影響力はどの程度か…

 参議院選挙目前だが、なんとなく、盛り上がりに欠く。旧来の選挙モードに戻った感じさえする。
 そのせいか、インターネット選挙を解禁できなかったことが大きいとの話もあるらしい。(周到に準備してきた候補者のなかには、悔しさ一杯の方もいそうだが。)
 しかし、はたしてそう言えるだろうか。ネット選挙ができなかったのは残念だが、日本ではそれほど大きな意味を持つか疑問が湧く。
 と言うのは、使える状態であっても、ネットを利用しない人は少なくないからだ。(携帯メールを除く。)日本全体でのネット利用はまだまだ限定的なのだ。ここはしっかりおさえておいた方がよい。

 そんなことがつい気になったのは、海外紙の有料記事を無料で読める方法を嬉々として語る人がいたから。
 そんなことを知っているのだから、相当インターネットを活用している方の筈。そんな人が、このレベルかと愕然とさせられたのである。
 間違えてはこまるが、違法行為ではない。こんなことは、WSJの記事を読む人なら、ほとんどの場合経験的に知っており、別に秘密ではない。皆、知らん顔をしているにすぎない。一般大衆紙ではないから、そんなつまらぬことに興味を覚える暇人など滅多にいないということ。・・・ところが、日本には、それを発見して嬉しい人がいる訳だ。

 これは、日米の新聞の違いを肌で理解していないということではないか。
 日本の新聞の方針は、明らかに、紙配達を続行させることにある。ネット版は、新聞記事の内容をできる限り簡素化し、社説を除けば、解説やコラム類は原則は不掲載。しかも、記事はすぐに消去される。(産経新聞は例外。あっぱれ。)そのかわり、どうでもよい面白記事を増やし、閲覧者を集めることには精をだしている。
 この状態で、記事を引用して質の高い議論ができるとは思えまい。
 米国紙は全く逆である。NYTの金融関係のブログ型コラム記事の質量兼ね備えた充実度を見れば雲泥の違いに愕然とさせられる筈。どうしても読みたくなる人は少なくないと思う。そんな内容を提供することがレゾンデートルということなのだろう。全記事が無料であっても、質に妥協などないのである。その質がわかる人達に読んでもらう新聞ということ。
 要するに、質の高い記事やコラムを読みたい人を相手にしている訳で、有料頁を無料で読まれたところで、ビジネスに大きな影響がないなら、新聞社としてもたいして気に止める訳がない。無料で読まれても、そんな人達は購読者予備軍でもあるからだ。しかも、ページビューが上がれば、メディアの広告価値を誇示することもできる。

 一方、日本の新聞は、“誰でもが新聞を読んでいるから、購買しないと社会から爪弾きされかねないよ”という手の商品でしかない。学者はこれをネット化する際のビジネスモデルを考える場合に、海外を参考にすることが多いが、全く違う商品で検討しても役には立つまい。
 雑誌で考えると、その差がもっとわかる。圧巻は英国Economist誌。すべてがウエブ上にあるという点を指しているのではない。おそらく、この雑誌をしっかり読む人は、定期送付講読している。時間があったら、どこででも続きを読める態勢にしたいからである。
 もちろん、皆が読むから購入する訳ではなく、世界の状況を自分の頭で考えるには、この雑誌なしにはどうにもならないと考えるからだ。おわかりだと思うが、ウエブに公開されているからこそ、この雑誌の圧倒的な質の高さ、そのエスプリを皆が知る訳。そして、記事での議論が至るところで行われ、この雑誌の価値は益々高まる訳だ。
 これに対して、日本の雑誌のコア読者は、多分、習い性購入者。そして、特集タイトルを見て、その号だけ買う人が沢山いる筈。中身がそうなっているから当然である。世界の状況がわかると期待して購入する人など、おそらくいまい。

 こんな、素人の話を聞きたくもないだろうから、データを紹介しておこうか。(1)NHKの5年に一度の調査結果が発表になったばかりなのである。

メディア毎日接触
(2000年→2010年の変化)
テレビ 新 聞 ネ ッ ト
全年齢 95 %

92 %
86 %

74 %
8 %

27 %
16-29歳 92 %

82 %
70 %

36 %
n.a.
 先ず、毎日インターネットを使う(メールを除く)人だが、その割合は27%でしかない。
 週1日以上でもようやく43%と、半分に達していない。要するに、ほとんどの人は滅多にネットなど見ないのである。見るのはテレビと新聞。ネットなどオマケ的存在にすぎない。時代遅れと呼ばれたくないから、一応ネットを見ることができるようになっているだけのことだろう。
 これでは余りに雑な見方だから、もう少し、細かく見ておこうか。
 男16〜29歳の“最も欠かせないメディア”は、「インターネット」と「テレビ」が同率で35%。残念ながら、毎日接触の数値は後日公開。尚、新聞はゼロに近いから、無くてもよい扱いということ。
 ご想像がつくと思うが、男女共に、30歳以上では4〜7割が「テレビ」を最重要視している。(若い人も含めた全体でも、一日に3時間以上視聴する人は6割を越えるのだから当然の結果ではある。)
 もちろん、「インターネットは高年齢化するほど重視する人は減る。
 新聞だが、男60歳以上の3割が欠かせないとしているが、他は2割以下。高齢層を除けば、衰退メディアと見なされていそうだ。

 この状態だと、ネット選挙が状況を大きく変えるという説は強引すぎると言わざるを得まい。
 ただ、若者を政治に引き込む効果は期待できそうだ。従って、テレビが“ネット選挙”と大騒ぎすれば、一過性かも知れぬが変化は生まれる。
メディアの効用比較
(2000年→2010年の変化)
分 野 テレビ 新 聞 活 字 ネ ッ ト
解説 48 %

57 %
41 %

27 %
1 %

2 %
1 %

3 %
情報 38 %

38 %
11 %

 9 %
26 %

15 %
4 %

18 %
報道 65 %

63 %
24 %

18 %
1 %

8 %
 それが一大転換の引き金になる可能性も否定はできない。すでに、若者の大半は新聞に毎日接する習慣を捨てているからだ。
 それに、ネットに期待されている点が“情報”である点を考えると、選挙の質が高まった可能性はかなり高い。地域と聴衆に合わせて、適当な話をするようなことができなくなっていたかも知れないから。

 それにしても、新聞の凋落ぶりはすさまじい。“解説”、“情報”、“報道”すべてで期待感が落ちているからだ。
 この数字を見ればおわかりのように、日本はネット時代ではなく、テレビ時代ということになる。

 --- 参照 ---
(1) “「日本人とテレビ 2010」調査結果の要約” NHK放送文化研究所・世論調査部 [2010年6月16日]
   http://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/housou/housou_10061601.pdf


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