■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2012.9.30 ■■■

   かぶれる木

山歩きで、注意していても避けきれないと言われるのが、虫刺されと植物のカブレ。
だからこそ、皮膚を剥き出しにしないというのが鉄則ではあるが、正直のところ、暑い時にはとてもそれを守る気にはならない。
ということで、虫刺されは覚悟し、カブレる木がありそうな場所にできる限り近寄らないで歩くことになる。要するに、ウルシ系樹木がありそうか、早めに判断できればどうということはない訳。
そりゃ当たり前の理屈だが、そんなことが簡単にできる訳がなかろうと言われそうだが、まあ、ある程度は可能なのである。と言うのは、ウルシ科の葉の形状はよく似ていて、しかも、結構、大きな葉だからである。周囲の緑を常に観察する習慣さえつけておけば、早目に危険を察知するのは、そうたいして難しくはない。

この葉の形だが、用語では「奇数羽状複葉」というらしい。10枚ほどが対になって柄についており、突端に1枚あるだけのこと。正確には、3〜7対ではあるが、パッと見、全体で10枚という印象。
早い話、山椒の飾り葉を大きくしたようなもの。ただ、カブレる木は鋸葉ではないが。これだけでおわかりのように、葉の形態自体は珍しいものではなく、かぶれない木でも見られる。
美しいナナカマドも鋸葉ではあるが「奇数羽状複葉」。一方、このカブレる木々の紅葉も負けず劣らず見事。紅葉している葉をカエデのように手にとって愛でたくなるが、そこは我慢ということ。このタイプの葉の場合、遠目の紅葉を愉しむのが一番である。

と言う話をしていると、ふと、さらなる樹木の見分け方を学びたくなったりしかねないが、小生はご遠慮申し上げている。下手に、ウルシ科の種の見分け方に興味を持ったりすると碌なことはなさそうだからだ。学者は全身カブレながら研究し、ついに成分を決定したという逸話が残っているが、素人はご勘弁である。
ともあれ、小生の場合は、この手の形状の葉の樹木近辺は避けるというルールを謹厳実直に守っている。

ただ、ウルシ以外にもカブレる木はあるそうだ。和紙原料で有名なミツマタ。
こちらも、葉を見ればほぼわかる。名前通り、葉が三又状についているからだ。わざわざ傷つけて樹液に触れることなどあり得そうにないから、こちらは心配するほどのことはなさそう。
にもかかわらず、書いておきたくなったのは、最近は樹木観察が盛んのようだから、この手の木があったら、探索の残骸がどこかにあるかも知れず、そのとばっちりを食わないように用心にこしたことはない。

そうそう、最近は、カブレの危険性は山歩きに留まらない。山菜料理にもご注意あれ。小生のようにタラの芽好きの場合、よくよく注意しないと、ウルシ系の新芽を入手したりしかねないのである。食べると、胃がカブレ、全身に回ってくるのは必至。そりゃ一大事。
素人に毛が生えたような山菜採りがいそうだから、信頼できる販売者以外からの購入はそれなりのリスクを覚悟しておく必要があるということ。

小生はまだ賞味したことが無いが、採りたてのコシアブラも同じこと。コレ、絶品らしいので人気急上昇中だが、一寸前までは知名度が低かった。と言うことは、栽培が始まったのが遅いから、需給バランスを考えると、リスクはタラの芽より高そうな感じ。道端で採りたてなどという手の売り場の場合は、よくよく眺めて確認した方がよかろう。
そもそも、このコシアブラ、古来は「金漆」の木だったというからウルシと似ていておかしくないかも。もっとも、樹木としてでなく、塗装分野での話らしい。
それにしても、漆は今もって使われているのに、「金漆」はどうして消えてしまったのだろう。金属・革用で、上質の透漆ということのようだから、余りに透明ラッカー的で工芸的にさっぱり面白くないとの評価がなされたのだろうか。反応型硬化樹脂質を含んでいるようにも見えないから、テカテカに光るだけの防錆油・皮革油でしかなく、使われなくなっただけのことかも知れぬが。


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