■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2012.10.26 ■■■

   落葉が待ち遠しい木

沢沿い道の混合林にカツラが、密集というほどではないが、まとまって生えていることがある。始まりは、植栽からの可能性もありそうだが。小生が抱くカツラのイメージはこんな感じ。

もっとも、小生が無知なだけで、カツラ並木はそこここにありそうである。例えば、八王子市南大沢地区の中央部を南北に抜ける道路はカツラ並木。通ったこともないし、その辺りの土地勘も無いが、写真で見る限り立派な街路樹である。

葉の形状が少々小太りのハート型で、なんとなく落ち着いていて、上品な感じがする樹木だ。都会でも、こざっぱりした新築の家や美麗なマンションの植栽に使われたりするのを見かけるから、そんな気分になるだけかも知れぬが。
涼しい所に向く樹木を、夏の照り返しが強い暑い場所に植えていることになるが、日々水をかけていれば結構元気に生きていける木のようだ。その辺りに目をつけられたというより、育ちが遅い木なので、土地の余裕が無き都会には好都合ということではないかと思われる。
と言っても、そんなことを言う人は滅多にいまい。葵祭で樹木精霊のシンボルとして枝が使われている清新な樹木ということで選ばれるのだと思う。
もっとも、鮮やかな黄葉が満月っぽいことの方が、中国文化の香りがするので、えらく魅力的と感じた人も少なくなかったようだ。
 宵の間の 月のかつらの うす紅葉
 照るとしもなき 初秋の空
   
[下鴨神社の禰宜/「方丈記」作者 鴨長明(1155-1216)]
 目には見て 手には取らえぬ 月の内の
 カツラ[楓]のごとき 妹をいかにせむ
   
[湯原王(730年頃活躍) 万葉集#632]

だからと言う訳ではないが、好みの樹木である。
なかでも、嬉しいのは落ち葉が目立つようになった頃。
都会では、掃除が面倒なので落ち葉は嫌われるが、高尾山や丹沢の山道のそばなら、落ち葉はそのまま。これがなかなかオツなもの。
焼きたてパンのような香りが漂ってくるからだ。カラメルと同じ成分だと言う。
たいていの人はこの香りに気付いて、カツラの木を始めて知ることになる。そして、一旦覚えると、夏を越すとどういう訳か落ち葉が恋しくなるもの。鴨長明も、黄色が褐色に変わってきたから、もうすぐ落ち葉の香りを味わえるとの期待感をよせて詠んでいたかも。

(ウエブ情報) 八王子市南大沢 秋の南大沢カツラ並木 October 1998 街角散歩横浜線沿線散歩 by Kaoru Sawahara


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