■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2012.11.21 ■■■

   湾岸苺の木

山桃は美味しい。もちろん熟れている黒ずんだものに限る。これで種がなければ言うこと無し。
ただただ酸っぱいだけのハズレに当たる方もおられるようだが、それは品種の違いか、はたまた土地のせいか、よくわからんが。
欠点は日持ちしないこと。運んでいるうちにグジャグジャになりかねないから、採りたての現地食が一番とか。それに、それなりの高さにある細い枝から小さな実を傷つけないようにもぎ取るのだから、供給量も限定的にならざるを得ないだろうし。

もっとも、新果樹導入ビジネスに徹する農家もあるし、果敢な挑戦を旨とする物流サービス企業も少なくない上に、ヤマモモ愛好消費者もいそうだから、そのうち状況は変わるか。
ただ、栽培品といっても、実から虫がのそのそと這い出してきたりすることがある。それも又楽しみのウチと思う方は稀で、ビックリ仰天して金輪際食べないとおっしゃっる方が多そう。ここら辺りが一番の障害かも。
でも、都会は多様化が進んでおり、見かけは桑の実類似でも、えらく酸っぱいメキシコ産ベリーを山積みにして売っている店もあるのだから、なんとかなるか。

果実もさることながら、樹木としても魅力的である。横に広がった樹形だし、それなりの高さに成長するから、いかにもその下でお休み下さいといった感じ。そのように剪定されているせいもあるのだろうが。ともあれ、暖かい地域の人々から愛されている、常緑雑木林の定番木である。
東京に住んでいると、伊豆高原駅の庭に生えているヤンモ、あるいは城ヶ崎海岸蓮着寺の天然記念物という印象でしかないが。・・・別荘地開発で伐採されつくし、残ったのはお寺ということで、今、又復活させて観光業で行こうという歴史を感じさせる情景である。

中国語では楊梅(ヤンメイ)で、英語はBayberry、地域によってはWaxberry。いずれも、成る程感を抱かせる名称だ。・・・枝は細目でしなるし、湾岸近い斜面での栽培に適していそう。実は確かにベリー系の形状。洗わなければ、実に松脂臭あり。
それに対して、日本語の山桃(ヤマモモ)の方は腑に落ちない。山のモモだというにすぎないと言われれば、そうかネとなるが、よく考えてみれば、桃の実と似ているとは思えないからだ。と言うことは、モモの概念が違ってしまった可能性がありそう。さすれば、モモとは実の色が赤系統で形状はまん丸ということかネ。

うーむ。
古事記で雷神退散効果を発揮したモモとは、山桃だったことになる。桃の実の色はピンクでしかないが、山桃は紅に近いから、赤色の強さから言えばヤママモ説の方に軍配が上がる。それにモモの実は産毛状の表皮だし、ヤマモモの実は苺の粒々状だから、現代のモモは、万葉集に記載されている毛桃に当たると見るべきか。以下の歌では、実のならない桃が登場するが、これはヤマモモの雄かも。と言っても、春の苑で桃の花を愛でたという歌の場合は、ヤマモモということはなかろうが。
 向つ峰に 立てる桃の木 ならめやと
 人ぞささやく 汝が心ゆめ
   
[作者不詳 万葉集#1356]
ただ、伊豆のヤンモはヤンメーのことだそうである。モモでは無い訳だ。平城天皇の楊梅陵から分植されたとの言い伝えがあるとか。名称由来としては、こちらの方が筋がよさそう。

花はじっくり眺めたことがなかったが、写真で見ると雌花はえらく地味である。「高知県は自生する条件が最適で、毎年3、4月ごろ、花弁のない小さな花が小枝の葉腋に咲く」そうだが、それを県花にしているそうだ。(1954年制定)
これには驚いた。徳島県のように県「木」ではなく県「花」だからだ。県「木」は別に制定しているのである。(1966年制定)暖かい地域では花にも人気があるということか。栽培品種も多々あるようだが、流石に花をウリにしているものは無いようだ。

(ウエブリソーシス)
 文化遺産オンライン(文化庁)>天然記念物/中部>蓮着寺のヤマモモ
 高知県の紹介>県のシンボル @高知県
 吉岡国光園>柑橘以外常緑樹/やまもも(15品種)



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