■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2012.11.22 ■■■

   滅茶苦茶雑種の木

シロヤシオという名前を初めて知ったのは、敬宮愛子内親王のお印に決定との報道から。公式名はゴヨウツツジ。もちろん御用ではなく、五葉である。白い5つの花弁が爽やかで、ツツジ一族なのは明らかだが、ヤシオは所謂ツツジとは別らしい。
ヤシオには色違いもあり、赤色バージョンは赤城山が有名だそうで、栃木県の県花だ。紫色になると、寒冷地に多いらしく、ミヤマツツジと呼ばれている。深山だろうが、美山と呼びたい気分。高度で、赤、白、紫が棲み分けているようだ。

この辺りの話、お花好きにとっては、なんということもないだろうが、素人にとっては、どうも気になる。
ツツジ系統ほど名前がよくわからない領域は無いからだ。
分類されているようだが、どう峻別しているのかさっぱりわからないのである。
  ・ツツジ(躑躅)
  ・サツキ(皐月)
  ・シャクナゲ(石楠花)
  ・ヤシオ(八汐)
  ・ツツジ属ではない植物・・・ドウダンツツジ(満天星/燈台躑躅)
ドウダンツツジだけは、見れば全く違うのはわかるし、シャクナゲは葉が全く違うので判別できるが、他はなんともはや。まあ、似たものだらけである。

と言っても学者の分類に興味がある訳ではない。どうして名前が違うのかを、単純に知りたいだけ。ところが、これがさっぱり要領を得ない回答だらけとくる。
なかには、1年かけて総合的に判別するとか、訳のわからぬことを言う専門家もいるらしく、どうなっていることやら。
しかたないので、推測してみることにした。

まず、わかっていること。
  ・栽培種の展示会的なイベントや、お祭りはサツキ。
  ・植物観察や山歩きでの対象はツツジ。
  ・シャクナゲには落葉タイプは含まれない。
  ・互いによく似た園芸品種がある。

ようするに、壮大な雑種の体系というにすぎまい。余りに多種多様な新種が生まれてしまい、なにがなにやら状態になってしまったと見るのが妥当。

そんな場合は、勝手に体系化してみるに限る。こんなところかな。
  ・基底にあるのは、ツツジの様々な種類。
  ・サツキはツツジの変種。
  ・サツキが変種化の原動力。
  ・これに、シャクナゲが絡む。

 ○ツツジの元
基本は落葉低木の次の系列と見た。
  ・痩尾根/岩場に生える三葉ツツジ(基本色は紅紫)
  ・ブナ林に生える五葉ツツジ(基本色は白)
  ・赤松林に生える餅ツツジ(花弁に斑点)
  ・草原に生える蓮華ツツジ(基本色は朱紅)
花が大きいのは、蓮華ツツジである。湯の丸高原は壮観。
これに非落葉樹種2系列が加わる。
半落葉性低木だが、日本列島南西部しか見られないもの。
  ・岸ツツジ(基本色は淡桃紫)
そして、半常緑性でそれなりの高さに成長するもの。
  ・山ツツジ(基本色は濃/淡赤)

 ○サツキの元
「岸ツツジ」が生えていない地域で、同しように生息しているのが、常緑の「皐月ツツジ」である。渓流沿いの水がかぶらない岩場で低い姿勢で成長する。茎は横に広がるので、縦というか上に伸びる気質のツツジより多少太め。酸性土壌の鹿沼土好み。(基本色は紅赤)
ツツジは新芽がでる前、春4月頃に一斉開花するが、サツキはかなり遅れて初夏6月に芽ぶきと一緒にダラダラと咲いていく。そんなところが、里の人に気に入られた点でもあろう。ただ、花は密集せず一輪ポツン型で、ツツジよりかなり小振り。華やかではないが、八重変種が生まれた可能性はありそう。
常緑性であるから、葉は硬くて、ツツジより小型。表面が皮革のような照葉だ。当然ながら、ツツジの葉表のような密生した毛羽立ちはないが、葉裏には毛があったりする。
こうなると、「岸ツツジ」が生えている地域には「皐月」という遅咲きは無いのかという疑問が湧く。多分それに該当するのが「丸葉皐月」だろう。
サツキとは、「皐月ツツジ」と「丸葉皐月」の変種が雑多に交じり合ったものと考えれば、頭の整理がつく。
ただ、栽培品種はこれに、ツツジやシャクナゲが取り込まれている筈。ゴチャゴチャものと言ってよかろう。

 ○シャクナゲの元
これは明らかに高山帯の植物。耐寒性あり。もちろん、細長い葉で常緑の低木。ただ、花も葉も比較的大き目なのが特徴。

 ○南方系ツツジの取り込み
上記のツツジ、サツキ、シャクナゲの雑種化にあたって、忘れてはならないのが、南の暖かい地域の常緑性ツツジの取り込み。
これが江戸期に大流行したため、爆発的な数の品種が生まれ、なにがなにやら状態になった訳である。栽培元が自己流でツツジ、サツキ、シャクナゲのどれかに当てはめた訳である。ソメイヨシノを作出した技術力を遺憾なく発揮させたのだから、傑作揃いだったに違いない。おそらく、人気品は以下の系列では。
 ・江戸霧島ツツジ 定番の鮮紅色
 ・琉球ツツジ 白系
 ・平戸ツツジ 大輪
その伝統は、神代植物公園のツツジの大群植に引き継がれているのかも。280品種、12,000株。
凄まじきもの、ツツジの品種。

こうして眺めてみると、ゴヨウツツジの清楚感は際立っている。

(参考サイト)
ツツジの楽園 赤城山 山肌を彩るツツジを一挙解説!特集, 赤城の自然 2012春2012.04.17(火) 群馬県・赤城山広域振興協議会
群馬県立つつじが岡公園ガイド > ツツジのいろいろ 群馬県館林市経済部花のまち観光課
公園へ行こう!ホーム > 公園・庭園を探す > 神代植物公園 > 見どころ ツツジの大群植



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