■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2012.12.20 ■■■

   弓の木

ウエブ検索で、ミネバリという櫛材の存在を始めて知った。木曽の名産とされているから、珍しい樹木とは思えない。調べたら、正確には「夜糞峰榛」。通称アズサだそうな。なんだ、そうなのか。それにしては、あんまりの名称。樹液からサリチル酸メチル臭が漂うため、これが大嫌いな人にそんな名前をつけられたのだろうか。
(ほほー、と思ったら、櫛材はアズサではなく、オレオレガンバだとか。さらにわからなくなった。)

アズサと言えばやはり弓材である。
 梓弓 引かばまにまに 寄らめども
 後の心を 知りかてぬかも
   
[石川郎女 万葉集#0098]
もっとも、石川郎女に言い寄るお方は梓ではなく、真弓できめてきた。
 み薦刈る 信濃の真弓 我が引かば
 貴人さびて 否と言はむかも
   
[久米禅師 万葉集#0096]

正倉院宝物には、梓弓が3張、槻弓が24張伝わる。(槻はケヤキ。)丸木作りで弦は失われているが、長くて立派なもの。真弓という名称の弓は無いようだ。
しかし、古事記には三者とも登場する。と言うことは、マユミは後から大流行したということかナ。
 外に見し 真弓の岡も 君ませば
 常つ御門と 侍宿するかも
   
[柿本人麻呂 万葉集#0174]
 南淵の 細川山に 立つ檀(まゆみ)
 弓束巻くまで 人に知らえじ
   
[作者不詳 万葉集#1330]
石川郎女への恋歌がある草壁皇子[天武天皇-持統天皇の皇子]だが、若死にし、その墓は明日香の「真弓の岡」に作られた。
細川山にも真弓があったのだから、明日香ではマユミは一般的な木だったのかも。ただ、久米禅師の歌でわかるように、大産地は信濃国だったらしい。

弓の時代でなくなると、マユミは全国的に伐採されてしまった可能性が高いが、時に、残っていることがある。樹木がわかる人が教えてくれたりする。
しげしげと眺めると、枝ぶりは「弓の木」そのもの。してみると、実用的ということで好まれたのではなく、自然木をそのまま弓にできるところが気にいられたということかも。
そう考えるのは、日本の弓は握り部分が中途より下だから。上部が折れないように気を遣っていると言うことになるが、これでは、標的を狙うのは難しくなる。そんな些細なことより、マユミの枝振りを愛でることの方が重要だったということでは。

(ウエブリソーシスから)
真弓 万葉神事語辞典 by 金熙淑 國學院大學デジタル・ミュージアム



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