■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2013.1.3 ■■■

   冗談名称の木

小生は競馬には無縁だが、昨年末のニュースには驚いた。第57回 有馬記念でゴールド血筋が強かったという手の話ではない。馬券での稼ぎが5年間で1億5千万円を越えたという、サラリーマンの方がおられたとの卑近な話題。市販プログラム改良での勝負の結果らしいから、こりゃ凄い。
常識的には、博打とは胴元だけが儲かる仕組み。本気でカネを投入したりすれば、身包みはがされるのがオチ。だが、例外もある訳だ。
もっとも、国税当局から課税されるそうで、外れ馬券購入費は必要経費として認められないらしいから、破滅人生を歩まされる破目に。博徒に対しては容赦なき社会なのである。

珍しい話なので取り上げたのだが、樹木にも珍しい名前の木が存在している。名前だけではなく、存在そのものも。なにせ、県によってはレッドデータブックに掲載されている位なのだ。・・・そう、ご想像がつくと思うが、「バクチノキ(博打の木)」である。
東京でこの木をご覧になりたいなら、神代植物公園か。一番奥の方にあり、赤っぽい木肌が露出しているだけの樹木で、どうということもない木である。秋に花が咲くというところだけは、特筆ものだが。その程度の目立たない木に突拍子もない名前を付けるとは何事かネ。しかも、方言ではなく、全国で正式名称として通用するらしい。津々浦々にパチンコ店がある国だし、博打は昔から極く身近に居たということか。
尚、別名はビラン(毘蘭)樹。これ又、トンデモ名称。東アジアにしか生えていない木なのにインド風と来た。バクチノキ同様に、お遊び命名かも。皮膚が剥がれて糜爛状態という指摘では。花が咲くとアーモンド臭が強烈に漂うらしいから、それに合わせ漢字を替えてみたのだが、どうかネといったところ。

しかし、とんでもない名前のわりには、神社の杜に楠と一緒に育っており、老木として大事にされていたりする。両者ともに、暖かく、海岸に近い場所に、わざわざ植えられた気配濃厚。楠ならわかるが、バクチノキはどういうこと。
日本では、この手の材が珍重されたとは思えないし、薬用樹と言っても特別な効能があるという訳ではなく代替役でしかなさそうなのに。

そんなことを考えると、シナリオとしてはこんなところか。
もともとは、他の名前があった。剥げ落ちる樹皮を染料にしていたから、その辺りを示唆するような名称があった。ところが、生憎と、皇帝を意味する黄色系染料なので使うのがはばかれる。そのため、古代名は消されてしまった。その後は、せいぜいが裸の木といった程度の大人しい名称に。

それが、突然にして、冗談半分の名称で植栽するようになった訳である。そんなことをして楽しむ輩は幕末期の蘭学を学んでいた若者達しかいないのでは。
それなりに、薬用樹の知識があるので、植えたりして使ったのだと思われる。ただ、藩の御用役から、維新の志士に変身し始めると、体質が変わる。博徒ともおつきあいが始まる。そもそも、博徒は所謂浪人や旗本奴の集まり。町奴と違い、無頼ではあるが無教養という訳ではなく、相性は悪くない。そうなれば、冗談半分にバクチノキと呼んでもおかしくなかろう。
明治維新を思い出す木なのかも知れぬ。ひょっとすると、明治の自由民権運動でも、博徒が係わっていて、この木は象徴的なものだったかも。

以上、素人の馬鹿話でしかないが、そんなところが、この木に一番合っている逸話とはいえまいか。

(ウエブリソーシス) 日本のレッドデータ 環境省
バクチノキ・・・絶滅危惧I類(千葉、岡山)、絶滅危惧II類(兵庫)、準絶滅危惧種(愛知、三重、広島、山口) @2012
(記事) 「外れ馬券」は経費か否か 払戻総額36億円“ころがしの天才”が争う「VS国税法廷」 2012.12.29 12:00 産経ニュース



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