■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2013.3.20■■■

   春一番の花が咲く木

熱海桜や梅はとっくに咲いたが、それより前に咲くのが「まんさく」。先日、新宿御苑の池の傍でふと目にしたので、パンフレットを見ると3月のみどころに入っているようだ。それならもう少し人気が出てもよさそうだが。

Wiki等を見ると、早春に他の花に先駆けて咲くことから、「まず咲く」が音韻変化し「まんさく」となったというもっともらしい語源が記載されている。出典があるといっても、納得感極めて薄し。
里山好きの方々が好む話だから定説化されているのではなかろうか。
小生は、この木に花が沢山咲く年は豊年満作になるということだと思うが。黄色の紐のような花で、いかにもそんな予想にピッタリの意匠だし。

見かけによらず、有用な木で、白川郷の合掌造りの結束用に使われているという。「ねそ」と呼ばれるそうだが、それは「Nai[綯い]」-「So[麻]」という使用概念から来た名称で木そのものの名前ではなかろう。
そんな話に関心がある訳でもないのだが、どういう訳か万葉集に登場しないので、その理由がなんなのかのヒントが名前にないのか、つい考えてしまるから。多分、呪詛にかかわるような木だったから、掲載しない方針だったのだろうが、どういうことなのだろうか。

尚、中国原産の類縁種はカラフルで大振りな花の咲くシナマンサク。中国での名称はなんと金縷梅。黄色の縷様の花という点ではわかるが、咲く時期が同じだから、蝋梅同様に、「梅」とされている訳だ。中国の美的センスはどうも理解できぬ。
こちらは、芳香があるので、欧米ではガーデナーが飛びついたそうだ。そりゃ、冬に咲く花が欠乏しているのだから当然だろう。西洋のセンスで命名されると、縷様だから魔女の箒ということか、"Chinese witch hazel"となる。

まあ、日本固有種や金縷梅という話は、植物公園で通用するにすぎず、現実のマンサクと称される木のほとんどは園芸品種。色々と掛け合わされ、種々雑多なのだと思う。
しかし、正真正銘の日本の固有種のマンサクは山がちの場所では自生しており、珍しい木ではなかった筈。それが、だんだんと消えているのだと。言われてみると、そうなのかもという気もする。
その原因は、カビによる葉枯れの可能性が指摘されている。しかしながら、突然にして新種のカビが広がることは考えにくい。林の伐採による新陳代謝不足が悪影響を与えているのかも。

(参照)
万葉の花 万葉集に登場する植物一覧 真神原 風人
"Witch Hazels" By Chris Lane, Timber Press
今、マンサクが危ない! (岐阜県森林科学研究所)大橋章博 岐阜県の林業 2003.03



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