■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2013.7.26 ■■■

   出世記念の木

エンジュ(槐)は、Japanese pagodatree とか、Sophora du Japon と呼ばれるが、中国から日本に入って来た樹木である。なかなか素敵な日本から来た木ということで、欧州で受け入れられたということか。

日本に渡来したのはかなり古いようである。と言うのは、宇美八幡宮に「子安の木」と呼ばれる御神木があるからだ。
神功皇后が三韓征伐凱旋で、「筑紫にかえりて、うみの宮の槐にとりすがって、応神天皇をばうみ奉り給いける。」という言い伝えによるものらしい。
もっとも、このお宮は楠の林に囲まれた状況にあり、そこに槐を植える必然性は感じられないから、凱旋記念植樹ということではないかと思うが。

尚、エンジュが有名なのは、「周礼曰 三槐 三公位焉」ということから。
宮廷の外に3本の槐樹が植わっており、天子朝見の際、三公(太師/太傳/太保; 日本では太政/左/右大臣)が槐樹に面していたということ。当然ながら、中国ではなかなか人気の木だったらしい。高い官位に就くと、庭に出世記念植樹となっておかしくなかろう。
もっとも、科挙を嫌った日本では人気は限定的だった模様。
しかし、日本的発想では、この木は「延寿」ということになり、長寿祝いの植樹がありそうなもの。多少は流行ったかも知れぬが、どういう訳か、家庭では余り見かけない感じがする。
そのかわり、街路樹としては定番。

都会の汚れた空気にも耐えられるし、大木になりにくいということなのだろう。
しかし、どうなのかな。
暑くなると花が咲いて元気一杯の筈なのだが、このところ、どうも今一歩の印象。水分欠乏という訳でもないと思うが。小鳥も虫も来てない感じだし、心配である。土の細菌の調子が悪いとか、黴やウイルスにやられたりしていなければよいのだが。

最後に、白居易(772-846)四十歳、母の喪中で郷里に帰っていた時の作品、「暮立」を引用して〆としよう。
  黄昏獨立佛堂前
  満地槐花満樹蝉
  大抵四時心総苦
  就中腸断是秋天


(引用) 冊子 「子安の木」解説 宇美八幡宮

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