■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2013.8.23 ■■■

   粘着の木

ベタつく様を示す用語には3種類ある。
 ・モチ[]・・・モチノヨネ[糯米]
  調理すると強い粘性を示す穀類を指す。
 ・モチ[]・・・モチイヒ[餠飯]
  モチ性穀粒を加工し、強い粘性を示す食物を指す。
 ・モチ[]・・・トリトリモチ[鳥取黐]
  植物を加工し、強い粘性を示す非食品を指す。
植物名で言えば、「糯」だと、モチツツジ/ネバツツジ糯躑躅がある。害虫が粘液に絡め取られてしまう仕掛け。ネバを取り去るとすぐに葉が食べられてしまうそうである。
「餅」はどうなのだろうか。柏餅のように、葉を使った餅の名前はあるが、植物そのものはなさそう。
やはり本命は「黐」である。樹皮から「トリトリモチ[鳥取黐]」を製造する、「黐の木」があるからだ。

しかし、中国語ではモチノキは「」である。
この漢字は、日本の樹木としては「ソヨゴ」になるが、いかにもソヨソヨというオノマトベ的な名称である。樹木分類なら、こちらの方があっている感じがするが、どうも同類と見なす発想はことごとく嫌われたようである。(ヒメモチ[姫黐]は日本列島での矮小化種だろうから中国名は無いのでは。)
  鐵冬・・・クロガネモチ[黒鉄黐]
  大柄冬・・・アオハダ
  波縁冬・・・イヌツゲ
  具柄冬・・・ソヨゴ
  大葉冬・・・タラヨウ

葉の特徴が似ているのだから、樹木分類としては妥当だと思うが、「青」という表現が気に入らなかったのだろうか。同属なのだから、モチ原料の樹皮の性質も似ている筈だから「黐」族にしてもよさそうだが、それも今一歩と見たようである。別に、モチが作れない筈がないのだが。モチノキ製を本モチとすれば、冬製品だから、青モチになるだけ。今一歩の品質だった可能性はあるが。

もっとも、モチノキの代替としては、これらではなく、全く異なる木が結構用いられたようである。こちらは、赤モチだ。そうなると、本モチは白モチとも言える。
  ヤマグルマ/トリモチノキ
  ガマズミ(ズミはベリー系)

今や、トリモチなど希少製品であるから、白モチ、青モチ、赤モチがとう違うかなど知っている人も希少だろう。と言って、その文化を維持していこうと呼びかけるほどのものでもなさそうだが。

尚、トリトリモチ系列の命名とは思えない樹木もある。葉がモチノキに似ているという解説が流布されているが信用しかねる。もともと、葉の特徴で命名したくないからこそのモチノキなのだから。
  ネズミモチ鼠黐
  カナメモチ要黐/アカメモチ赤芽黐
  オオカナメモチ大要黐

尚、ネズミモチはホームセンターで売っているという話も耳にするので書いておこう。生垣用樹木としても並んでいるそうだが、ネズム捕り用の製品として定番なのだとか。ゴキブリ粘着捕獲の強力化製品なのだろう。

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