■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.1.12 ■■■

     蓮花木

五代十国の時代、後蜀(934-965)の皇帝 孟昶は木芙蓉好きで、首都である成都城内をその花木で飾らせたそうである。現在も市花だそうだ。
  「芙蓉城」蘇軾詩集卷十六[1078年]
  芙蓉城中花冥冥,誰其主者石與丁。・・・

フヨウ/芙蓉とは、もともとは蓮の花を指していたそうで、それが木本にも咲くということのようである。従って、正式名は「木芙蓉」。
蓮の花とはずいぶんと違うように思うが、大きな花であるという点で、大陸的な発想では似ているということになるのだろうか。

基本品種は、花の色で決まるようで、白、紅、粉、黄、酔の5種らしい。それほど品種が生まれていないのは、八重咲き「酔」が完成形とされたからではないだろうか。文人達は、その花色一日三変を大いに愛でたからである。朝開花する時は白、昼になるとピンクで、夕刻には紅になって、夜萎んでしまう訳である。おそらく、温度変化によるものだろうが、そんなことを得々と語るのは無粋というもの。

成都に限らず、四川省一帯でよくみられる木らしいが、本場はどうも湖南省のようだ。そこは「芙蓉国」と呼ばれているから。
この辺りが原産地なのだろうか。
そうそう、園芸品種に無知だと、すぐにわからないのが、「芙蓉」と「木槿/ムクゲ/はちす」の違い。
芙蓉は少々大振りで、枝分かれしてそれぞれが伸びているから、こんもり感が生まれるので、すぐわかると教えてはもらうのだが。まあ、よく見れば、広がっている葉の芙蓉と、ひょろっと長く分かれている葉の木槿という点で見分けはつくが。

その木槿だが、西洋では、旧約聖書「シャロンの薔薇」で有名。[Syruan Hibisucus]もちろん、インドや東南アジアにも広く自生しており、いかにも亜熱帯の木という感じで、東アジアの温帯樹木という感じがしない。しかし、冷涼地への適応性があり、韓国の国花にまでなっているし、日本列島でも北海道南端辺りでも生えており、極めて丈夫な樹木といえよう。
日本でも、昔から、そこここに植わっていたようだ。なにせ、芭蕉の馬上旅での駄作がある位だから。
  道のべの 木槿は馬に くはれけり
レストランでハイビスカスの花は飾りですと言われたことがあるので、そんなものをむしゃむしゃ食べて大丈夫かという気もするが。まあ、小生にしてから、伝統食とかいかにも嘘臭い話を聞かされ、アルカイド含有とされている花弁の天麩羅を食べてみて、コレ結構いけるとのたまうクチだから、御馬へのご批判はとてもできそうにないが。

ついでながら、Hibiscusにも触れておこう。
こちらは誰が見てもいかにも熱帯系な花。リゾートエリアには必ず植えられており、一度見れば、印象が強烈だから忘れようがない。マレーシアではBunga[花] Raya[大]と呼ばれ至るところで咲いているそうだし、沖縄では仏桑華/ブッソウゲという立派な名前がついており、先島辺りだと野生植物状態に近そう。だが、なんといってもハイビスカスと言えばハワイ。渡来品種の改良に注力した成果だろうが、なんといっても、香りが立つ種を重視したことが大きかったのではなかろうか。
と言っても、花が大振りで派手で、いかにも南洋的だからこその人気であるのは間違いなかろう。侘びさび愛好者でも芙蓉を好むのは、そこいら辺りの心情からではなかろうか。

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