■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.1.22 ■■■

     開実瓜木

 ますらをが 爪木にあけび さしそへて
    暮るれば歸る 大原の里

      [寂然法師/藤原頼業@「山家集」]
 西行法師との十首やり取り「かえし」の一つ
 樵が、手土産アケビを薪に挿して帰宅する夕暮れシーン
 西行の高野山とは一味違うしみじみとした秋の風情


アケビは「開け実」のことだとは、誰でも思うこと。
秋になれば、スーパーの片隅に並ぶからだ。高価なものではないが、飛びつく人も余りいないようだ。現代の果実の感覚からすれば、食べる部分少なしとなるからか。かつては調理して全部食べたのだが、そういう時代でもなかろうし。

名前だが、実を重視するなら、「木通」という訳のわからぬ漢字表現を止め、正直に「開実瓜」の木とでもしたらよさそうなもの。それが気に喰わぬなら、情緒的表現として「五葉蔓」という手もあろうに。樹木を見た人でないとわからぬだろうが、ついそう思ってしまう。・・・そこで、アケビ一族/Akebiaを眺めて見ると、「五葉木通/pentaphylla」もあるそうで、そうは問屋が卸さずか。そうそう、「三葉木通/trifoliata」も存在している。

両者共に自生しているとのこと。常識的に考えれば、これらは、「開け実」より、その"茎"が注目されたことになる訳だから、蔓植物愛好者が全国に広めたと見てよかろう。
もちろん、現代のように、猫の額のお庭での園芸植物ということではなく、"茎"の工作マニア的感覚で愛された筈。実用上極めて大切な樹木だったと考えてもよかろう。そうでなければ、「木通」などという言葉を後生大事に使い続けた筈が無いからだ。

そうそう、当たり前の話だが、若葉は柔らかいから食用になる。一応エディブルというレベルではなく、美味そのもの。
お浸しなら、ホウレンソウより上質というのが、小生の個人的評価。食べたことがある人は少ないだろうから、これが正当と言えるかは保証の限りではないが。しかし、少なくとも、花の天麩羅の類よりは、格段に美味だと思う。(もっとも、現代の子供の評価がどうなるかはなんとも。こんなもの、不味くてとても食べれたものではないとされるかも。)

アケビの近縁者は少ないようだが、台湾には存在しているそうだ。
日本のアケビは大陸にも存在するそうだが、台湾→日本列島→大陸という線も考えられるのでは。素人考えそのものだが。

そんな気になったのは、素人的な目で類縁を眺めたからである。
大陸の「木通」系には、常緑の八月瓜/Holboelliaの一族や猫兒屎/Decaisneaの一族が存在する。これが本流だろう。ただ、後者の名前は仰天で、臭くてとても食するような実ではなさそうに思ってしまう。しかしながら、ブルー・ソーセージと呼ばれるところから見て、美味しい可能性が高い。腐り易いということではなかろうか。実際、シッキムではたいへんに価値が高い果実だそうだし。


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