表紙 目次 | ■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.5.4 ■■■ Honeysuckle対応樹木 Honeysuckleは、花弁を抜いて元を吸えば甘味を感じるという、そのものズバリの名称の樹木群。日本では、蔓性が強調されて、吸いカズラと呼ばれる。砂糖が超貴重だった時代は、間違いなく大人気の植物だったろう。 しかし、そんな遊びは消滅の憂き目。今や残っているのは名前だけで、当該植物にも滅多に出会えまい。 欧米では、この木は垣根として広く利用されていたようだ。当然、ほったらかしになる公算が高く、様々な場所で繁殖するに至る。そのため、Honeysuckleと聞くと、子供の頃にそこら辺りで花の甘さを愉しんだ記憶が蘇って来るのだろう。多分に郷愁なのだろうが、その時の喜びが浮かんでくるのかも知れぬ。 そんなこともあって、詩歌に頻繁に登場するのだと思われる。そのお蔭で、日本人も、この名前を知っている訳だ。 ところが、日本ではそうはいかない。 「吸蔓」が詠まれた歌が掲載されている和歌集の話を耳にしたことがないのだ。嫌っている筈もないのに。 もっとも、確かに、Honeysuckle=スイカズラだが、両者の範囲は全く異なる。Honeysuckleには様々な種類が含まれるが、日本でのスイカズラはそのなかのほんの一種にすぎないからだ。ただ、一応、一群の代表とされてはいる。 <吸蔓> "吸蔓"/Japanese・姫 つまり、Honeysuckleと呼ばれている一群は、日本では呼び名が一様ではないということ。花の蜜の甘味を吸う面白さがある植物群とのセンスは無いということ。そんなものは、体になんの役にも立たないということで見向きもされなかったのではなかろうか。 それではどのように呼ばれたかは、スイカズラとパソコンに文字入力すれば一目瞭然。登場してくる漢字は「吸蔓」と思いきや、「忍冬」なのだ。 小生はどうしても、「にんどう」と読んでしまうが、ルビでそう読むなと指定されることも少なくない。 南葵文庫の庭で 忍冬(すいかずら)の 高い香を知ったようなときもあります (梶井基次郎「橡の花――或る私信――」1925年) <忍冬> 淡紅、浜・毛浜、華南、大果/giant Burmese、 硬毛/hairy、木立/Chaparral、照葉["吸蔓"近縁]、 蕊帽忍冬/privet、皺葉忍冬/grape、突抜忍冬/trumpet、新疆忍冬/Tatarian おそらく、日本人には、「吸蔓」より「忍冬」の方がピンとくるのだろう。 蔓性木本にもかかわらず、冬場を耐え忍ぶ半常緑性ということで、そこに感じ入る体質があるからだ。もともとは花に注目しての言葉だと思うが、日本ではおそらく蔓についている葉に注目したのである。 そうそう、歌が無いと言っても、検索すると蕪村の句に巡りあうことになる。こちらは子規が「にんどう」とルビをふってくれている。精細的美とされる句だが、鋭敏な神経の持ち主でないと、とうてい味わえそうにない。 蚊の声す 忍冬の花 散るたびに ちなみに、中国では、花の色が、白から黄色に変化するということで「金銀花」と呼ぶ。常緑樹と見なしていないと思われる。と言うのは、「忍冬的花蕾」感覚があるから。だからこそ薬になるという発想。 だいたい、変色した葉が少々残っている状態の樹木を、半常緑と呼べる訳がない。ただ、葉は縮んでくるから、いかにも寒さを堪えている印象を与えるから、そこを指摘したのかも。 そうそう、日本でも、金銀花という名称も使うようだ。 <金銀花> "金銀木"[="瓢箪木"]、大/Standish's こんなことを書くと、ほとんど「忍冬」で統一されているかに思ってしまうが、そういう訳でもない。冬場弱い種類もあるからかも知れないが、実の形の面白さでつけた名前も用いられている。花がペアで咲く結果と思われるが、実が瓢箪の形状なのだ。従って、瓢箪だゼとなる。 これは、有毒な実があるとの注意喚起のためかも。 <瓢箪木> 蝦夷/Alpine、薄葉.、千島、蝋・北上、対馬/winter、 藪・小米、花/Amur or Maack、日光・山・赤石、 "瓢箪木"/Morrow's、早咲、紅花、近畿["小鶯神楽"近縁]、 粗毛・大山・南部、大、鬼 「Honeysuckle」は、そういう点ではどのように峻別しているのだろうか。まあ、基本的に食用にはしないということか。 <Honeysuckle> white, pink, orange, purpleflower, evergreen, winter, Chrysantha; Japanese, Amur, giant Burmese, Tatarian, Arizona, Greek, Mexican, Utah, Etruscan; southern, Alpine, Chaparral; American fly, swamp fly, mountain fly, Golden Flame; goat-leaf, blueleaf, boxleaf, limber, trumpet, hairy, privet; bearberry, black-berried, blue-berried, grape; Morrow's, おっと、忘れるところだった。逆に、これは食べれるゼという表現かナと思わせるものもある。 鶯が盛んに鳴き始め、お神楽でもという気分になる頃に実がつく植物は素敵とでも言いたげな名称も用いられている。「鶯神楽」なる命名も存在するのだ。まあ、ハスカップに似ていても有毒のものがあるから注意せよとの話を耳にしたことがあるから、間違いかも知れぬが。 <鶯神楽> 黒実[ハスカップ]/blue-berried、山・深山・"鶯神楽"、小 残りは例外。 これはよくわからん。和語ではないのだろうが、わざわざ独自の名前をつける気もしなかったということか。 <他> 丸葉ヨノミ・毛ヨノミ["黒実鶯神楽"近縁] 根室附子玉/Chrysantha 子彈把子/pink 「日本の樹木」出鱈目解説−INDEX >>> HOME>>> (C) 2014 RandDManagement.com |