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■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2014.6.13 ■■■

集真藍花木

アジサイの花の名所とされる所はそこかしこに。
梅雨時でも観光の客足が失せないということもあり、注力したくなるのだろう。それに、日本原産だから、誇れる花木との意識も働くし。

無粋な小生にしてから、この季節になると和菓子に手が伸びる。それほど美味しいとは思えないのだが、微妙な色合いに惹かれて賞味したくなる。おそらく、日本人の美的センスに合う花なのだろう。

その割には、語源がはっきりしない。
「集(あづ)真(さ)藍(あい)」がなまったものとの説が有力だそうだが、いかにも言語学者が作った話臭い。「安治佐為」だけでなく、「味狭藍」とも記載されたから、説得力はあると言えばあるのだが。
小生は、貝原益軒の「厚(あつ)咲(さ)き」という、小毬のような花を愛でる見方が自然に感じるからでもある。「藍」色に焦点がある訳ではなく、花の色が微妙に「七変化」することが嬉しいなら、そう考えたくもなろう。

そうそう、「紫陽花」とは、白居易の命名と書いてあるが、これも又不可思議。中国でそんな用語が使われているとは思えないからだ。それが、とある解説に出会い氷解。

要するに、白居易は、招賢寺で見つけた木をえらく気にいったのである。・・・
  色紫気香 芳麗可愛 頗類仙物
しかし、中国では、誰もそう思わなかった。
なんだ、どこにでもある木を知らないのかネといったところかも。詠まれた律詩は駄作とみなされたのだろうか。
  何年植向仙壇上、早晩移栽到梵家。
  雖在人間人不識、与君名作紫陽花。

しかし、この詩を読んだ日本の上流階級の人々にとっては、そうならない。これがアジサイと考えたため、えらく感応したのである。
そりゃそうだろう。山に籠っていれば、梅雨時に楽しむことといえば、アジサイを愛でること位だ。その花が仙境イメージにピッタリと我らが師に認めてもらったとなれば、この名前にとびつくのは道理。

ただ、その頃、山に咲くアジサイがどのような花だったかはよくわかっていないようだ。
よく知られているように、左の写真のように、額のような装飾花が周りを縁取るタイプがある。(額紫陽花)
いかにも原型という感じを受ける。コレかネ。

普通に見かける鑑賞用は、ほとんど装飾花のみ。(本紫陽花)
これが西欧で改良され「Hydrangea」となり、移入されると「西洋紫陽花」だ。西欧は日本のような火山国土壌ではないから、赤系統の発色が良いので人気が出たのではないかという気がするが、どうなのだろうか。

実は、もう一つ、無視できないタイプが存在している。
「小紫陽花」。
小生は、一度見たことがあるだけ。
素人なので、コアジサイというから、集合花の塊や葉が小振りだけのタイプかと思いきや、これが全く違うのである。装飾花皆無とくる。およそ紫陽花的とは言い難いと感じたが、集合花であり、よくよく考えればそう違うものでもない。
だが、驚かされたのは、そんな点ではない。この樹木は湿った所を嫌うとの説明があったから。およそ、梅雨時に映えるアジサイらしさを欠いているのだ。
しかし、こちらは一群が山に生えているのを見かけたとしたら、間違いなく「集真藍」と呼びたくなりそうな花である。

(引用元)
萩原義雄:"「あじさい【紫陽花】」あぢさゐ" 2 0 0 3 . 0 7 . 0 6 www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/ko_ajisai.pdf
http://www.chinapoesy.com/TangShi221084.html

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