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■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2015.11.16 ■■■

金盞銀台でなく冬知らずでは

立冬の末候(72候の52番目)は「金盞香」。
ここで言う金盞は、菊類の金盞花 or 黄金盞/Pot marigoldではなく、水仙のこととされる。従って、11月中旬は、丁度、その花が咲き始める頃と見なされているようだ。

皆さんこれにご納得のようだが、気になるので、少々見ておこう。

まず名前から。
不可思議な命名に見えるが、水仙花は拡がった白色花弁の中心部にさらに筒型の派手な黄色の花弁がつくので、通称金盞銀台と呼ばれていたらしい。
類似(福寿草=側金盞花)の呼び方があるから、比較的よく使われていた言葉なのだろう。
ただ、盃が銭に替わると、梧桐系の金銭花こと午時花/Midday flower/午時花 or 夜落金錢。もちろん、銀もある。葵系の銀銭花 or 朝露草/Flower of an hour Bladder or ketmia/野西瓜苗 or 香鈴草
わざわざこんなつまらぬことを引いてくるのは、倭名類聚抄@935年頃収載の「こむせんか」は金銭花であると見なしているようだから。と言うのは、金盞花は江戸時代渡来とされているのだ。素人にはその理由はわからぬが。

マ、これはこれで置いておいて、気になる話の方に移ろう。
それは開花時期である。・・・
水仙が新暦11月中旬に開花とは、いくらなんでも余りに早すぎるのでは。

水仙は、雪中花と呼ばれている。明らかに、立冬を過ぎてからの雪まっさかりなってから開花のイメージである。誕生花なら、1月に入ってからの登場だろう。早咲き系園芸品種の「日本水仙」にしても、いいとこ12月中旬開花では。爪木崎に見にいくとしても早くて年末。大型花系の「ラッパ水仙」に至っては4月初旬だ。水仙見頃と言えば、普通は、1月下旬から2月頃の感覚と言ってよかろう。

もっとも、金盞花 or 黄金盞/Pot marigold/に至っては、開花は早くても春めいてから。小生の感覚だと、初夏の仏花だ。
これでは「金盞香」が金盞花と主張する人がいる訳がない。

しかし、ご存知だろうか。
「冬知らず」の存在を。
11月に小さな黄色の菊のような花を咲かせる。もちろん、名前の通り、数か月次々と咲かせるのである。
コレならぴったりはまる。菊系であるから、おそらく花は可食だし、芳香もあろう。

まあ、いっそのこと、「金盞香」を止め、中国用語の「野鶏入水為蜃(雉入大水為蜃)」にする手もあろう。
鶏が水中で大蛤に化けるというのは、余りにも馬鹿馬鹿しい気もするが、淡泊な鶏肉も餌が少なくなるこの時期から美味しさが落ち、スープ(湯)の質を考えると、蛤澄まし汁の抜群の美味さに負けるという意味と解釈したらどうか。

(参照) 磯野真秀:「資料別・草木初見リスト」 Hiyoshi Review or Natural Science Keio Univ. No.45, 69-94 2009
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