表紙 目次 | ■■■ 「日本の樹木」出鱈目解説 2015.12.25 ■■■ 疼く木 柊こと、ヒイラギは、初冬に沢山の小さな白い可憐な花を咲かせる。 ひっそりとして目立たないが。 鼻を近づけると僅かだが淡い金木犀的な香りを感じる。 そんなこともあって、椿[ツバキ]-榎[エノキ]-楸[ヒサギ]-柊[ヒイラギ]ということで、「木+冬=柊」という創作文字と思いがちだが、違うそうである。 ただ、萬葉集にはヒイラギだけは収載されていないようである。 巨勢山の つらつら椿 つらつらに 見つつ偲はな 巨勢の春野を [萬葉集#54] 我が門の 榎の実もり 食む百千鳥 千鳥は来れど 君ぞ来まさぬ [萬葉集3872] ぬばたまの 夜の更けゆけば 久木生ふる 清き川原に 千鳥しば鳴く [萬葉集925] 「九重の門の しりくめ繩の なよしの頭 ひゝら木らいかに」とぞいひあへる。 [「紀貫之土佐日記」] 冬の特徴的な木ということで柊となった訳ではないとすればどういうことなのだろうか。・・・ 考えてみれば、冬イメージは西洋柊のクリスマスから来ているから、極めて新しい話という気はする。しかし、焼鰯の頭を挿した柊を門口に飾る魔除けはいかにも古い時代からの風習臭い。古事記に登場する、大國主神の系譜に属している比比羅木之其花麻豆美神の正体の可能性もあるし。 ところが、解説を読むとナ〜ンだとなる。 この樹木はもともと「疼[ひひら]く木」だったというに過ぎない。それを柊という漢字にしてしまったということらしい。そのような国字かと思いきや、柊という文字は中国にも存在しているという。 但し、ヒイラギ自体は關東地方〜台湾(山地)に生える木。大陸には生えていないようだ。つまり、漢字はあっても、樹木名ではなかったのである。ところが、どうも、樹木と一緒にに日本漢字「柊」ががやって来た。そこで、この樹木の名称は「柊樹」となってしまった次第。 出典がわからないのではたして本当かネ、という気分もあるのだが、他の説は耳にしないところを見ると何か証拠があるのだろう。 棘があるので、生垣にはもってこいだが、どういう訳か神社に植わっていることがある。なかには、それがウリの社もあるから驚き。神社はオープンなのが特徴で、棘の垣根などもっての他だし、厄払いの樹木を境内にわざわざ植えるのもナンダカネだから。 もちろん、花が発する芳香を愛でるというならいかにもありそう。しかし、その目的なら、柊ではなく、金木犀/丹桂あるいは銀木犀/桂花だろう。さらにその類縁もありうるかも。銀木犀と柊の雑種とされる柊木犀だ。 この"雑種"樹木が不可思議なのである。前述したように柊は日本にしか生えていなかった訳で、一方の銀木犀といえば大陸の樹木。それで雑種化があり得るというのだから、ほぼ奇跡としか言いようがあるまい。 素人からすれば、銀木犀に人気があり日本にかなり移入されたと見る。この樹木は、ヒイラギに似ていることもあり、たまたま日本で交雑してしまったということ。 なにせ、柊という名称は日本発なのだから、柊木犀も日本から大陸に渡ったと考えてもおかしくなかろう。 神社も、もともとは金木犀か銀木犀を植えていたが、それが次第に柊木犀になってしまい、そうなると見た目の印象は柊となんら変わらないから、全面柊になってしまったと見ることもできよう。 そう考えるのは、ヒイラギにしても、必ずしも「疼」タイプのトゲ葉になる訳でもないらしいから。外敵に晒されると急遽トゲが生まれる機構が備わった植物だというのである。 → 「ヒイラギの葉、トゲ発生の仕組みが判明」[2012.12.21](C)National Geographic Society と言うことは、棘無しの柊木犀の筈ということで植えても、棘が出たりするということ。棘葉の樹木だらけになってしまえば、それならこの辺りの植え込みは柊で行くかとなってもおかしくはあるまい。 「日本の樹木」出鱈目解説−INDEX >>> HOME>>> (C) 2015 RandDManagement.com |