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2000.3.2
 
 


不毛な郵政民営化論…


 自由民主党の総裁選挙に出馬した小泉衆議院議員が郵政3事業の民営化を長く主張している。時代を考えれば、当然だと支持する声も多い。一方、この施策は現在の体制を揺るがしかねないので、政治の動きは鈍く、このため、議論を積極的に続けなければという方もおられるようだ。志の高さはよくわかる。

 しかし、技術革新と社会変化を分析する者にとっては、時代感覚を喪失した議論に見える。
 もちろん、財政投融資の役割は、極めて高度な国策上の問題であり、議論百出なのはよくわかる。しかし、こうした観点の一方で「全国津々浦々の郵便局の役割は重要である。」とか、「安全に文書を配送する仕組みは民間にゆだねる訳にはいくまい。」といった甲論乙駁が登場する。

 はっきり言って、今、郵便局を民営化するかどうかに議論の時間を割くべきではなかろう。情報通信技術の革新のスピードは速い。各家庭に通信端末が入り、多くのことは端末で処理可能になる。遠からず、郵便局など不要になる。どうせいらなくなるものを、今、国営にするか、民営にするか議論しても無駄ではないだろうか。

 現在、愁眉の課題は、情報通信技術革新による新時代の郵政とはどうあるべきか、であろう。電話や放送がデータ伝送の一部になってしまう時代が見え始めたにもかかわらず、政治の動きは極めて鈍い。「情報通信産業の振興」などと掛け声は勇ましいが、肝心の政策方針は皆目わからない。---いや、政治家というより、研究者が政治家に働きかけようとしないからこうなるのではないのか。研究者は通信のプロトコルやハードの標準化だけやればよい時代ではない。技術の将来を理解している人からのアドバイスなくして、まっとうな政策などできる筈がない。通信技術が社会に与えるインパクトの大きさを認識して、どのようなフィロソフィで通信政策を進めるべきなのか、研究者はもっと積極的に意見を述べるべきだ。

 郵政省が管轄している『通信』はいまや国全体の大きな問題である。今後、どのような方針で望むのかで、国の進路が決まり、その結果国力の盛衰まで大きな影響を受ける。皆が気になっている高度な政治問題がいまもって無回答のままだ。
 インターネット上で決済を進める社会にするなら、どのような通信インフラにしなければいけないのか?---金融決済機関はどうからむのだ?
 国境が不明瞭になったら税金をどう課税し、どう徴収するのか?---規制はどのようにするのだ?
 政府は通信網の管理運営にどのように関与するのだ?、等々。
 これらに、いつ回答を出すつもりなのだろう。成り行きに任せるつもりなのだろうか。あるいは、方針はすべて米国に倣うということなのだろうか。

 いまもって政治がリーダーシップを発揮しようとしないのは、技術革新のインパクトを理解できないからだろう。インターネットの本格的普及が始まったというのに、いつまで郵政民営化を悠長に議論しているつもりなのか。もう問題は起き始めている。一刻の猶予もならない。


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