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2000.3.2
 
 


先進国に学ばない政治家…


 日本では、先進国の状況を調べてみようというと、すぐに米国と決めたがる。米国の進んだシステムはどうなっており、これにどのように追いつくべきかという過去の発想が抜けきれない。実は、インターネットの時代に入り、驚いたことにアジアの国々も先進国になりつつある。---といった指摘をしても、本気にしない人が多い。一部の特殊例でアジアの国々を先進国と判断すべきでない、と思い込んでいるからだ。
 しかし、そのような見方は正しいだろうか。

 なんといっても目立つのは政府機関の姿勢だ。産業育成を図ろうという国は、インターネット社会実現への道を政府自ら明確に打ち出している。韓国や台湾は電子政府を実現しようと動いているし、香港は1998年「Digital 21」を宣言し、政府の公共サービスのインターネット化を図っている。
 香港をデジタル都市にすることだと言いきり、そのためにはメールは不可欠として、20個ものフリー・メールのサイトをホームページに並べている。もちろん、中文の申請用紙も用意されているし、支払い手段まで示されている。人口600万人であるから、日本ならさしづめ県庁だが、このレベルのホームページを日本で見たことがない。
 また、香港では公共交通機関のチケットはとうにICカード化している。勿論、カードは日本の大手企業の開発品だ。一方、日本では、2000年になっても未だに試験から一歩も進まない。

 圧巻はシンガポールだ。24時間稼働のワンストップ行政サービスを実現すると宣言し、計画は着々と進んでいる。政府自らが一般の人が使えるサイトを開設しており、この美しくデザインされたサイトを一目見れば、政府のリーダーシップでインターネット社会構築へ向けて動こうという強烈な意志が見えてくる。シンガポールをグローバル情報通信のセンターにしようということなのだが、その取り組みの真剣さは、担当政府機関のボード・メンバーを見ればわかる。CISCO Systems、Nokia Networks、3i、SAPといった企業からの代表が加わっている。

 これらと比較すると、日本政府の対応は極めて異常だ。熱心な部署がある一方で、型どおりホームページを揃えているだけで、何のためか皆目わからないページもある。情報公開と称して「世間の常識を確認しただけ」の議事録が堂々と並んでいたりする。行政の生産性の低さを象徴するような内容だ。
 失望したのは、こうした状況を突破する気概がありそうな政府高官の発言である。インターネット時代に対応して東京・大阪間の通信トラフィック容量拡大を図ると、胸を張って回答したのである。しかも、2000年幕開け直前の結節点のような時の記者会見の場でである。「道路や港でなく、情報通信のハードへの投資の方向へ移行するぞ」と業界に宣言することがインターネット社会構築の鍵を握ると考えているのであろうか。
 シンガポール政府の政策目標は、インフラ構築ではない。ましてや、お祭り騒ぎで、国民をインターネットに引き込もうとはしない。政府自らが電子化を進めることで、実際便利になるし、素晴らしいことができると実感できるように工夫し続けている。そのためには、どのようなインフラが必要かという発想である。特に、日本との大きな違いは、次世代を担う子供用のページが用意されていることだ。ここにフィロソフィーの根本的違いがある。
 おそらく、政治家はホワイトハウスのホームページを閲覧するだけで解った気になり、www.sgは見ようとさえしていないのだろう。

 日本の政治は、延々と「規制緩和」の議論を続けている。時間をかけてこんな議論をするより、現状の面倒な書類提出のエレクトリック化を進めてもらう方が余程有り難いし、その方が、インターネット社会実現へ大きく進むのではないだろうか。
 もっとも、エレクトリック化にも抵抗する既得権益集団がいるとのことだから、事態は変わらないかもしれない。


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