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2000.3.2
 
 


首都移転を急いでどのような意味があるのか…


 一部の反対論はあるものの、国会等の移転計画が90年から着々と進んでいる。その目的は「地方分権と行政改革」、「一極集中是正」、「災害対処」ということらしい。一方、反対論者は「国家の本質に係わる」から慎重に検討すべしという論旨が多いようだ。

 技術革新の大きな波が来ると予想する者にとっては、これは浅薄な議論としか思えない。情報通信技術の進歩が著しく、これを利用する事業がこれから次々と生まれていくというのに、こうした流れとは無縁な古典的な発想で新首都プロジェクトを進めようとしているようだ。
 一般的にいえば、集中すれば効率は向上し、分散は効率低下を意味する。しかし、効率を落としても急いで実施すべき施策ではなかろう。これからの技術の流れを考えると、移転にヒト・モノ・カネを投入するより、むしろ東京を情報創出都市化するためのリフォームに投資すべきではないだろうか。同時に、防災都市研究促進策を徹底的に進めるべきと思う。

 東京の特徴は、様々なものが密度濃く存在する「超」過密性にある。このような都市は世界でも数少ない。過密で住みにくいと早とちりしがちだが、これからは、実は一番魅力的な都市に変貌する可能性が高い。

 インターネット社会になったからと言って、ビジネスでは、直接のコミュニケーションの価値は下がることは無い。というより、さらに上昇する可能性が高い。様々な人が狭い場所に居ることは、直接面談に要する無駄な移動時間が少なくてすむから、極めて効率的だ。
 情報通信技術によって、ライフスタイルも変わる。食やファッション文化に直に接することができて、各種アミューズメントやイベントにライブで参加できることが貴重になる。しかも、時間の価値が高まるから、移動に要する時間が極端に少なくてすむ都心居住の魅力は増大する。特に健康な老人や若い企業家にとっては、こうした環境こそ生活最適地なのではないか。ソフト開発の技術者のような純頭脳労働者にとっても、とてつもなくエキサイティングな都市に映るだろう。こうした、観点から見ると、東京は比類無いほどに魅力的な都市である。「産業革命」を牽引する都市に変貌するポテンシャルも秘めているのだ。

 都市の魅力を活用すれば、世界の一流頭脳を惹きつけることもできる。そうすれば、東京は世界一の生産性を誇る都市になるかもしれない。このような工夫を図る方が、首都移転より、余程意義があると思うのだが。


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