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2000.3.18
 
 


文部と科技庁の統合をバネに科学技術の発展を…

 文部省と科学技術庁の統合がいよいよ2000年から始まる。この統合により予算の重複が少なくなり方針も柔軟になる、という期待の一方で、ミクロ的には不協和音が聞こえてくる。日本の基礎研究者はロビーイングを嫌がる体質なので、表立って声は現れないが、この施策の評判がかんばしくない。官僚や政治家からのコントロールが強まり、「基礎科学研究の伝統」が消失する、と受けとめているようだ。これからの時代は、科学が産業を引っ張っていかざるを得ないのに、研究開発に直接関係ない内部問題処理に時間をとられる愚はくれぐれも避けて欲しい。

 確かに、科学技術庁流の大型プロジェクト型運営と自由度が高い大学の仕組みでは、風土から投入予算規模まで、全く異なる。
 典型として語られるのが、宇宙開発事業団と宇宙科学研究所の違いだ。前者は政策目標に向けて邁進する極めて実利型の研究開発であり、一部の産業界からは相当の期待が寄せられている。一方、後者には、産業界はほとんど関心を寄せない。宇宙がらみの割に予算は少額であり、天体物理学を中心とした純粋な学術研究を進めているからだ。

 一般に、宇宙研究には膨大な金がかかると考えられており、この分野に複数の独立した研究組織があること自体、実は驚きだ。日本はもともと直接的な成果がないものには冷たい社会であり、純粋な基礎科学研究への支援は弱体である。そのなかで、頑張って高度な学問水準を保ってきた努力は大変なものだったと思う。

 しかし、社会と基礎研究者の両者ともに、今までのこうした姿勢からの転換が迫られている。というのは、産業化のスピードが早くなり、基礎科学の成果が直接産業に活かせる時代が来たからである。基礎科学の研究力が弱体であると、産業の競争力も低下せざるを得ない。頭脳と時間は有限である。省庁統合を機会に、新産業創出や産業の再興に結びつく成果があがるよう、研究開発の新体制構築に一気に進んで欲しい。


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